中国の秦剛外相がわずか7カ月で解任された。秦氏を巡っては既に1カ月間動静不明で、さまざまな臆測を呼んでいるが、解任の理由は明らかにされていない。民主主義国では考えられないことである。
消息について説明避ける
秦氏は昨年末に外相に就任。習近平国家主席の信頼が厚いとされ、駐米大使からスピード出世を遂げた。就任後は3カ月足らずで副首相級の国務委員も兼務。前任の王毅氏は兼務までに5年かかっている。
今年3月の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の際には、中国憲法の赤い冊子を手に、台湾の武力統一も辞さない中国の立場を強調。強硬な「戦狼外交」を内外に印象付けた。最後に公の場に姿を見せたのは、6月25日のロシア外務次官らとの会談だ。今月の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の外相会議は「体調」を理由に欠席すると発表された。
中国外務省が秦氏の消息について「提供できる情報はない」(報道官)と説明を避け続けたため、行方不明の理由に関して新型コロナウイルス感染や権力闘争、女性問題といった真偽不明の情報が広がった。外務省のホームページからは秦氏の活動記録が削除されたという。
わずか7カ月での外相解任は例がない。これまでの経緯は極めて不透明であり、国際社会の不信感は高まる一方だ。外交への悪影響は避けられまい。中国は世界2位の経済大国で国連安全保障理事会常任理事国でもあるが、このような閉鎖性は大国にはそぐわない。共産党一党独裁体制の異質さを表していると言えよう。
後任には王氏が返り咲いた。王氏は日本に対する強硬な発言が目立つ。秦氏の代理で出席したASEAN関連外相会議では、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出に対する批判を展開。林芳正外相との会談でも懸念を表明した。
一方、岸田文雄首相は「建設的かつ安定的な日中関係」の構築を目指し、王氏の来日を働き掛けるという。しかし、安易に関係改善に動くのは国益を損なうことにもなりかねない。
日中間には沖縄県・尖閣諸島問題や東シナ海のガス田問題などの懸案があるほか、3月には中国でアステラス製薬の日本人社員が反スパイ法違反の疑いで拘束された。処理水放出への非科学的な批判は、日本を貶(おとし)めるための攻撃にほかならない。
このほか、看過できない中国の行動は山ほどある。台湾統一に向けた威嚇、南シナ海の違法な軍事拠点化、国内の人権弾圧、経済圏構想「一帯一路」における「債務のわな」、そしてウクライナを侵略するロシアへの融和姿勢など挙げれば切りがない。どのようにすれば中国との「建設的かつ安定的」な関係を築けるのか疑問だ。
首相は警戒を高めよ
支持率低下に直面する岸田首相が、対中外交で得点を稼ごうとしているのであれば、危ういことだと言わざるを得ない。中国は尖閣の領有権を一方的に主張するだけでなく、沖縄が日本領土であることを疑問視する動きも強めている。首相は中国への警戒を高めるべきだ。







