
カンボジアで行われた内戦終結後7回目となる総選挙(下院定数125、任期5年)は、フン・セン首相率いる与党人民党がほぼ120議席獲得で圧勝となった。
最終結果は8月上旬に発表され、下旬に招集される国民議会でフン・セン氏の長男フン・マネット氏が「世襲」で首相に就任する見込みだ。
最大野党の登録拒否
人民党が圧勝したのは、最大野党キャンドルライト党を選挙の土俵から追放したことが大きい。人民党の息のかかった国家選挙管理委員会は、キャンドルライト党候補者の登録を拒否した。その理由が提出書類の一部が原本ではなく複写だったというのだから、理解を得るのは難しいだろう。
キャンドルライト党は地方選に相当する、昨年のコミューン評議会選挙で得票率が2割以上と健闘し、今回の総選挙への足掛かりを掴(つか)んでいた。しかし総選挙で圧勝し、長男への権力禅譲シナリオを描いていたフン・セン氏は、正面からの勝負を避けつつ、政権基盤の維持を図る形となった。
フン・セン氏は、200万人と言われる自国民を虐殺したポル・ポト政権から祖国を解放した立役者だ。1991年のパリ和平協定で内戦に終止符を打ち、荒廃した国土を復興へと導いて今の経済発展へとつなげた功績も大きなものがある。だが、政敵を強引な手法で政界から追放することは懸念される。
国際社会は前回の総選挙同様の不公正さを非難。米国は「選挙は自由でも公正でもなかった」とし、ビザ停止や援助の一部停止を明らかにした。また、アジア自由選挙ネットワークなど17団体は「選挙の透明性や公平性が著しく欠如している」との共同声明で告発した。ただ、西側の論理だけでは割り切れない政治文化があることには留意する必要があろう。
西側社会のブーイングの中、懸念されるのはカンボジアがますます中国に対する傾斜を強めていくことだ。中国は昨年末、カンボジア初となる高速道路を完成させた。中国が出した建設資金は20億㌦(約2800億円)と巨額で、カンボジア最大の港湾都市シアヌークビルと首都プノンペンを結ぶ。
さらに、シアヌークビル近郊にはリアム海軍基地がある。中国の財政支援で拡張工事中の同基地は、南シナ海に開かれたタイ湾の入り口にある軍事的要衝だ。「海外の兵站(へいたん)能力」を高めていく方針を打ち出している中国人民解放軍が、アフリカのジブチ基地に次ぐ新たな海外基地にするのではとの疑惑が浮上している。
対中傾斜正す働き掛けを
93年に行われた初の総選挙では、わが国から派遣された文民警察官やボランティアが武装勢力に襲撃され2人の死者を出した。自衛隊が初めて国連平和維持活動(PKO)に参加したのもカンボジアだった。
カンボジア和平のため、血も汗も流したわが国に問われるのは、カンボジアの外交的バランス感覚を覚醒させて中国を後ろ盾とせず、民主化軌道に戻るよう本腰を入れて働き掛けられるかだ。






