トップオピニオン社説【社説】朝鮮戦争休戦70年 北の核に日米韓の連携強化を

【社説】朝鮮戦争休戦70年 北の核に日米韓の連携強化を

朝鮮半島で戦火を交えた国連軍と中国・北朝鮮両国軍が休戦協定を結んで70年になった。韓国と北朝鮮の南北対峙(たいじ)が今日まで続く中で、韓国は民主主義国として著しい経済発展を遂げた一方、北朝鮮は「核保有国」として大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験に拍車を掛け、再び軍事的緊張が高まっている。日米韓が安全保障の連携を強化する必要性は増している。

初めて「大韓民国」と呼ぶ

北朝鮮は休戦後の70年、金正恩朝鮮労働党総書記まで最高指導者が3代世襲となる国家体制の存立基盤を軍に置く先軍政治を取り、とりわけ核兵器開発を至上命題としている。この動きに歯止めをかけようと、これまで北朝鮮の核実験や弾道ミサイル実験に国連安全保障理事会が制裁決議を採択してきた。

だが、安保理常任理事国であるロシアのウクライナ侵略で安保理は機能しなくなり、北朝鮮の核開発に弾みをつけることになった。昨年5月、北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射への制裁決議案に対しロシアは中国と共に拒否権を発動。初めて核兵器開発を巡る対北朝鮮制裁決議案が否決された。

懸念されるのは北朝鮮とロシアとの関係拡大だ。ウクライナへの攻撃で弾薬が不足したロシアに北朝鮮は弾薬を援助し、代わりにロシアは食料などを供与している。これでは北朝鮮に対する制裁もなし崩しになる。実際、北朝鮮は弾道ミサイル発射実験を加速し、同年9月には核兵器使用条件などを定めた法令を採択した。

また、正恩氏の妹の金与正党副部長は今月、これまで「南朝鮮」などと称した韓国を「大韓民国」と正式名称で初めて呼んだ。民族統一を目指す「特殊関係」から韓国を敵対国家とする「国家間関係」への認識の変化も臆測されるが、核保有で自らの独立国としての体制維持に自信を深めたとも受け止められる。

北朝鮮の核兵器へのこだわりは朝鮮戦争からだ。第2次世界大戦後間もなく欧州正面が鉄のカーテンの東西冷戦に入り、極東で火を噴いたのが1950年に勃発した戦争だった。その1年前には、中国大陸の内戦をソ連の支援を受けた中国共産党が制して中華人民共和国を樹立し、ソ連は原爆実験に成功して米国に次ぐ核保有国となり、朝鮮半島の武力統一を目論(もくろ)む北朝鮮の背中を押した。

3年余り戦乱は続いたが、国連軍の介入と中国軍の参戦で一進一退の膠着(こうちゃく)状態になった。国連軍最高司令官のマッカーサー元帥は、トルーマン米大統領に原爆使用を求めて解任されている。休戦は、爆撃に加えて原爆が使用されるかもしれない脅威に、中国軍の支援を受けながらも北朝鮮が屈した側面もある。北朝鮮は、休戦後間もなく原子力の平和利用を建前として核兵器開発に着手したと言われる。

抑止力を一層高めよ

一方、日本にとっては日米安保体制、自衛隊発足への契機となった。極東の脅威は北朝鮮の核兵器開発で当時より増大している。日米、米韓は核の脅威を巡り、拡大抑止協議を進めているが、アジア太平洋圏の民主主義諸国の連帯を強化し抑止力を一層高めるべきだ。

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