政府は、子育て支援への国民的理解を深めるための国民運動「こどもまんなかアクション」をスタートさせた。
岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」の一環というが、効果はほとんど期待できず、むしろその本質から目を逸(そ)らすものだ。
こども家庭庁でイベント
東京・霞が関のこども家庭庁で行われたキックオフイベントで、岸田首相は「これを機に子育てに優しい社会の輪が全国に広がることを期待したい」と強調した。今後、全国でリレー形式のシンポジウムを開くほか、子育て支援の好事例を表彰し、11月を子育て支援の取り組みを集中的に講じる「秋のこどもまんなか月間」に定める。
厚生労働省の発表によると、2022年の「合計特殊出生率」は過去最低の1・26にとどまった。1年間に生まれた子供の数は前年比4万875人減の77万747人で、人口の自然減は約80万人と過去最大となった。岸田首相のあいさつは「静かなる有事」とも言われる少子化・人口減問題に対する危機感が乏しく、あまりにお花畑的だ。
政府は6月に少子化対策として「こども未来戦略方針」を閣議決定。今後3年間で年間3兆円台半ばを投じ、児童手当や育児休業給付の拡充などを柱に対策を進めていく。しかしこれらは子育て支援策でしかなく、少子化対策としての実効性には各方面から疑問が呈されている。
さらに今回の「こどもまんなかアクション」の命名は、子育て支援のニュアンスも薄まり、ほとんど児童福祉の標語と化している。政府の施策が、ますます少子化対策から遠ざかっていることを図らずも象徴している。
少子化対策の要は、いかに非婚化・晩婚化を防ぐかにある。婚外子の割合が2%程度の日本では結婚する人が増えなければ、出生数は増えない。しかし、経済力がなく結婚できない人、結婚・出産は「ぜいたく」と考える若い人、さらに結婚する意思がない人が増えている。この問題を解決せずして少子化対策の実効性は期待できない。
いま政府がすべきことは、結婚の意義、育児の喜びなどを訴える結婚奨励の国民運動である。そして、若い世代が結婚できるような経済支援策にこそ予算を投入すべきである。
現在の子育て支援策は、子供を持つ世帯や、これから結婚する経済力のあるカップルには歓迎されるだろう。しかし、少子化対策への効果は極めて限定的という分析もある。
政府の戦略方針は、経済力や配偶者との出会いがなく未婚のままでいる人と、結婚して子供を持ち多くの支援を受けられる人との格差を広め、日本社会のいびつな二極化が進んでいく可能性が高い。成長の果実の「分配」に力を入れる「新しい資本主義」を掲げる岸田政権の経済方針とも矛盾するものだ。
若い男女への支援を
政府が力を入れるべきは、結婚と子供を産むことの奨励である。とりわけ若い男女の出会いの場を増やし、結婚に踏み出せるよう祝福して支援する国民運動の推進だ。血税は、このような実効性の期待できる国民運動にこそ投入すべきである。







