【社説】穀物輸出合意停止 身勝手な露の非人道的措置

ロシアが、ウクライナ産穀物を黒海経由で輸出する合意の履行停止を発表した。
停止が長期化すれば世界の食料危機が再び深刻化しかねず、ロシアの姿勢は極めて身勝手で無責任だ。

途上国で食料危機の恐れ

合意は、ロシアによるウクライナ侵略が続く中、トルコと国連の仲介で昨年7月に成立。これまでに45カ国へ3200万㌧超を輸出してきた。合意は昨年11月、今年3月、5月と3回延長されたものの、ロシアは合意の恩恵を受けられていないと不満を表明していた。

現在は北半球で収穫時期を迎えており、合意停止の短期的な影響はほとんどないとみられている。だが停止が長引けば、食料価格が高騰し、途上国で食料危機が再び悪化することが強く懸念される。特にアフリカ東部ではこの数十年で最悪の干ばつが起きており、ソマリア、エチオピア、ケニアなどが深刻な影響を受けるとの見方も出ている。

ロシアは欧米の制裁で輸出が滞っていると主張し、合意への復帰は自分たちの要求が「具体的に達成された場合のみ検討する」としている。これに対し、ブリンケン米国務長官は「ロシアの食料や肥料は制裁対象ではない」と述べ、輸出制限はしないと強調した。

小麦の輸出量で世界1位のロシアは、世界の食料安全保障を大きく左右する立場だと言っていい。ロシアの身勝手で非人道的な措置は容認できない。グテレス国連事務総長は「ロシアの決定はあらゆる場所で困窮している人々に打撃を与える」と強く非難した。

合意停止の直前には、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島とロシア本土を結ぶ橋で爆発が発生した。ロシアのペスコフ大統領報道官は、合意停止とは「全く関係がない」と主張しているが、国際法違反のウクライナ侵略を続ける中、自国に有利な状況をつくり出すため、食料問題を取引材料にしようとしているのであれば言語道断だ。

ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアは明らかに政治的な問題を解決するため圧力をかけている」と指摘。グテレス氏とトルコのエルドアン大統領に、ロシアを除いた3者で輸出を継続するよう提案する書簡を送ったことを明らかにした。

一方、エルドアン氏は「ロシアのプーチン大統領は継続を望んでいると信じている」と強調し、ロシアと外相レベルで電話協議を行い、合意の延長や早期復活へ説得を続ける意向を示した。説得が奏功することが願われるが、合意停止が長引くようであれば、ロシア抜きの輸出体制構築も検討する必要がある。

日本は支援強化主導を

ロシアの合意停止について、松野博一官房長官は「極めて遺憾だ。国際社会と連携し、ロシアが復帰するよう強く求めていく」と述べた。

ウクライナ侵略に伴う食料価格の高騰は、日本経済にも大きな打撃を与えた。政府は合意停止による影響を注視するとともに、途上国での食料危機の深刻化に備え、先進7カ国(G7)議長国として支援体制の強化を主導すべきだ。

spot_img