欧米では中国に対し、デカップリング(切り離し)からデリスキング(リスクの軽減)という新たな戦略が浮上している。これまでは米国を中心に、中国の軍事力拡大防止のため、その基礎となる経済発展を抑えるデカップリングを主張してきた。デリスキングの背景に対中認識の甘さがないか懸念が残る。
G7サミットで打ち出す
欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は2023年に入ってから、中国について重要技術の流出を避けながら安全保障に直結しない分野の経済関係を維持するデリスキングを訴えている。5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)では、中国を念頭にこの言葉が首脳声明に盛り込まれた。
バイデン米大統領はサミットで、米中対立を背景とする世界経済の分断を回避しつつ、半導体や重要鉱物資源など戦略物資の国際サプライチェーン(供給網)を再編し、中国への過度な依存から脱却することが必要だと主張した。中国がグローバル経済に深く組み込まれている現実を踏まえれば、確かにデカップリングは簡単ではない。だが中国を牽制(けんせい)する上で、デカップリングをわざわざデリスキングに言い換える必要はない。
4月にはフランスのマクロン大統領が訪中し、習近平国家主席と会談。ウクライナ危機を巡って「ロシアを正気に戻し、みんなを交渉の場に着かせることを期待している」などと習氏を持ち上げた。会談後に発表された協定には、航空機大手エアバスなど企業間の大口契約も含まれた。マクロン氏は台湾情勢について「米国に追随すべきでない」との認識も示すなど、中国に対する融和的な姿勢が目立つ。
ドイツのショルツ首相も、中国とのデカップリングは現実的ではないとして米中摩擦と距離を取ろうとしている。デリスキングの背景には、欧州の対中認識の甘さがあるのではないか。
6月に訪中したブリンケン米国務長官との会談で、習氏は「広々とした地球は中米がそれぞれ発展し、ともに繁栄することを完全に受け入れられる」と述べた。これは、かつて習氏が当時のオバマ米大統領に「広大な太平洋には中米両大国を受け入れる十分な余地がある」と話したことをほうふつとさせる。太平洋を東西に分割し、中国が西太平洋の覇権を握るという野心を示した言葉だ。こうした姿勢を見過ごすことはできない。
中国ではきょう、改正反スパイ法が施行される。中国共産党の一党独裁体制と相いれない欧米などの価値観が流入することを警戒しているためだ。3月には北京で、アステラス製薬の日本人男性が反スパイ法違反容疑で拘束された。法改正によって当局の恣意(しい)的な運用が一層進むことが懸念される。
デカップリングを進めよ
香港では3年前に施行された国家安全維持法(国安法)で統制強化が進み、高度な自治を保障する「一国二制度」は形骸化した。ウイグル族など少数民族の人権弾圧も続いている。自由、民主主義、人権、法の支配などの価値観を共有する西側諸国は、中国との対立は避けられない。時間がかかっても中国とのデカップリングを進めるべきだ。






