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【社説】通貨スワップ 日韓の信頼強化につなげよ

日韓財務対話で握手する鈴木俊一財務相(左)と韓国の秋慶鎬・経済副首相兼企画財政相=29日午後、東京都千代田区の財務省(同省提供)

日本と韓国の財政当局が約7年ぶりとなる閣僚級の「財務対話」を開き、2国間で金融危機時に外貨などを融通し合う「通貨スワップ(交換)協定」を100億㌦の限度額で再開することに合意した。

両国の関係改善を追い風に、経済・金融分野での連携強化を図ることが狙いだ。両国の信頼関係強化につなげることが求められる。

財務対話も7年ぶり再開

通貨スワップは、行き過ぎた通貨安を阻止するために必要な外貨などの提供を互いに約束するもので、金融協力の象徴と位置付けられる「外交カード」の一つ。韓国は1997年のアジア通貨危機の影響で大きな打撃を受けたが、現在の外貨準備高は約4200億㌦(約60兆円)に上っており、差し迫った必要性はない。

もっとも2008年のリーマン・ショックや、新型コロナウイルス感染拡大の際には、米国との期限付きの通貨スワップで助けられた経緯がある。危機再発への懸念から、尹錫悦政権が水面下で交渉してきた。日韓関係の改善を進める上で復活させる意義は大きい。

日韓通貨スワップ協定はアジア通貨危機を経て締結されたが、韓国の李明博大統領(当時)による島根県・竹島上陸などで両国の関係が悪化し、15年に期限切れで失効。06年に始まった財務対話もソウルで開かれた16年を最後に途絶えていた。対話再開によって、地域経済の成長支援などの分野でも協力を深めてもらいたい。

日韓関係を巡っては、日本がこのほど輸出手続きを簡素化する「グループA(旧ホワイト国)」に韓国を復帰させることを決めた。「グループA」は輸出管理が適切に行われ、大量破壊兵器などに利用可能な物資が拡散する恐れがないと認められる国が対象だが、日本は19年に韓国を「ホワイト国」から除外。これ以降に実施してきた厳格な輸出管理が全面解除されることになる。

また韓国は23年5月、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出計画に関して福島原発に専門家を派遣。夏の放出に向け、日本との連携で科学的説明を強化して国民の不安を払拭(ふっしょく)しようとしている。これらの動きも関係改善を踏まえたものだ。

覇権主義的な動きを強める中国や核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威に対処するため、日韓の連携は重要性を増している。6月初めにシンガポールで行われた日米韓防衛相会談では、北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射を受け、ミサイルの探知・追尾に関する情報を米国経由で3カ国が即時共有する仕組みを年内に本格稼働させることで一致した。通貨スワップ再開が日韓の防衛協力強化に結び付くことを期待したい。

レーダー問題で誠意示せ

首脳間のシャトル外交も復活する中、残された課題もある。18年に韓国軍艦艇が日本海で海上自衛隊の哨戒機に火器管制レーダーを照射した問題だ。

韓国側はこうした事実を否定しているが、この問題が解決されなければ日本との真の信頼関係を築くことはできない。韓国側の誠意ある対応を求めたい。

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