
2023年版観光白書は、新型コロナウイルス禍で落ち込んだ観光業が回復しつつあるものの、経済全体に占める付加価値が低いことが課題と指摘した。高付加価値化を推進し、「観光立国」への本格的な取り組みを再スタートすべきだ。
GDPに対し低い割合
水際対策が昨年10月に大幅緩和され、23年1~3月の訪日外国人旅行消費額は1兆146億円と、19年同期の約9割まで回復した。日本人についても22年の年間旅行消費額が前年比で9割近く増加、約17兆2000億円となった。
しかし、観光業の売上額から原価を差し引いた観光国内総生産(GDP)がGDP全体に占める割合は、19年時点で2・0%と、日本を除く先進7カ国(G7)平均の4・0%を大きく下回っている。
また、従業者1人当たりの付加価値額でも、日本は全産業の806万円に対し、観光産業ほかが491万円、宿泊業が534万円とかなり低い。こういった状況から、白書は「『稼げる産業』への変革に向けて売上の増加(客単位×顧客数の増加)が取り組み課題になる」と述べている。
江戸時代から国内旅行が盛んになった日本では、独特の旅文化や「おもてなし」が育った。そういう中で、旅人を相手に大きく儲(もう)けるという発想は少なかったようにみえる。しかし観光立国を目指すこれからは、おもてなしを大切にしながら、付加価値の高いサービスを提供し、それに見合う対価をしっかり得ていくという姿勢をはっきりとさせる必要があるだろう。
付加価値を高めるには、サービスの質の向上や参加型イベントなどコンテンツの開発が重要になってくる。日本は自然や文化など豊かな観光資源に恵まれている。観光客の要望を細かく分析し、新しい観光商品を提供する必要がある。
一方、白書は観光需要の回復の中で人材不足が大きな課題と指摘している。観光関係では、ホテルや旅館の接客業から、ツアープラン、さらに地域のストーリーなどコンテンツづくりの面でさまざまな人材が求められる。そういった人材の獲得のためにも、観光業がまず「儲かる」産業となることが重要だ。
さらには宿泊客を受け入れ、有名観光地を案内するだけでなく、創造的で夢のある産業に飛躍していくことが求められる。
東京や京都など有名観光地から、今後はインバウンドの地方への本格的拡大が期待される。日本は地理的にも文化的にも地方色が豊かな国である。埋もれた観光資源はたくさんある。
地方創生の重要な鍵として観光業が期待される。経営の厳しい鉄道のローカル線をどうするかが問題となっているが、交通インフラなどの見直しもその観点から行うべきだ。
おもてなしの心で歓迎を
一方、将来観光消費を期待できる若者のバックパッカーなどインバウンドの裾野を広げることも重要だ。円安を機に日本にやって来る外国人観光客を、おもてなしの心で温かく迎えたい。観光は産業であるとともに文化戦略の重要な一翼を担っていることを忘れたくない。







