トップオピニオン社説【社説】内閣不信任案否決 政権防衛最優先を改めよ

【社説】内閣不信任案否決 政権防衛最優先を改めよ

衆院本会議は、立憲民主党が提出した岸田文雄内閣不信任決議案を与党のほか日本維新の会、国民民主党などの反対多数で否決した。注目された衆院の解散総選挙は見送られることになり、国会は会期を延長せず21日に閉幕する見通しだ。

同案は数の力で否決されたが、政権防衛を最優先とする岸田首相の政治手法には問題点が多いのも確か。それを改めなければ、保守岩盤層からの信頼をさらに失い、内閣支持率の低下が続くことになろう。

提出の資格ない立民

立民の泉健太代表は、防衛費増額やマイナンバーカードを巡る相次ぐトラブルなどを挙げて不信任の理由とした。立民自身にも多くの問題が噴出し、野党第1党として失格だった。年中行事のように不信任案を提出する資格がそもそもなかったと言える。

ただ、泉代表が提出に当たって「政権を担う資格がない」と訴えた点に、岸田政権は謙虚に耳を傾けるべきだろう。

首相は13日の記者会見で衆院解散について「会期末まで情勢を見極めたい」としていた。自ら解散風を吹かせたもので、不信任案の提出に解散で対抗する可能性に含みを残した。ところが、提出前の15日に「解散見送り」を公表した。泉代表は「今回の解散騒動は何だったのか。国会の権威、議員の身分を軽んじている」と語ったがうなずける。首相の政治手法の不透明さが信頼感を削ぐのだ。

首相肝入りのごり押しでLGBT理解増進法成立に突き進んだ点も問題だ。自らの秘書官のオフレコ問題発言を機に誤った指導力を発揮した。これにより、自民党らしさの喪失と保守岩盤層の溶解をもたらしている。その岸田離れを察知した立民が不信任案提出へ強気になった原因の一つにもなっている。

立民はさらに同性婚に関する法制定に向けて動き出す可能性がある。これらは皇統にも関わる問題になる危険性が考えられる。それを考慮せず、再び「聞く力」を用い、政権への批判を回避するための動きに出るのだろうか。

そうした懸念を抱きつつ、歴史が築いてきた国柄と家庭を尊び、国家の理想像を明確にして命懸けの政権運営をするのが今求められる宰相像だろう。政権防衛を最優先にする小手先の政治では国難を乗り越えることはできないのだ。

政府が決定した「骨太の方針」では「異次元の少子化対策」をアピールするものの安定財源は明示されていない。内容も人口を増やす対策というより子育て政策にしかなっていない。防衛費増額を巡っても、財源に充てる増税の開始時期の先送りに含みを持たせ、財源確保の先行きに不透明感が増している。

志抱き正しく断行を

岸田首相の座右の銘は「春風接人」という。春の風の如く誰にでも優しく接するという意味だ。幕末の儒学者、佐藤一斎が残したその言葉に「秋霜自粛」の文言が続く。自らを厳しく律する必要性を説いている。首相には、安倍晋三元首相が抱いた「志」を継承しつつ、他者のさまざまな評価に惑わされず、正しく断行する覚悟を求めたい。

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