マイナンバーカードを巡ってトラブルが続出している。
こうした事態の背後にあるのは、重要情報の漏洩(ろうえい)に対する政府の危機感の薄さである。岸田文雄首相やマイナカードの普及を進めた河野太郎デジタル相の責任は重い。
トラブルが次々と発生
マイナカードに関しては、利用促進のための改正関連法が成立した。ところが、カードと健康保険証が一体化した「マイナ保険証」に別人の情報がひも付けられていたほか、公金受取口座の誤登録、カード取得者へ提供する「マイナポイント」が他人に付与されるなどのトラブルが続いている。
このうち公金受取口座では、家族など本人以外の口座を登録するケースが約13万件に上った。公金受取口座は1人1口座を任意で国に登録し、自治体などが給付金を支給する際に活用するが、口座名と本人の名前が違っていると給付されない。
政府は速やかに本人の口座に変更するよう求めている。マイナカードの普及を急ぐあまり、周知を徹底していなかったのではないか。
特に、これまでに7000件以上が確認されたマイナ保険証の誤登録は、国民の健康に害を及ぼしかねない深刻な事態だ。誤登録では個人情報が閲覧されたケースもあったほか、マイナカードの個人向けサイト「マイナポータル」で他人の年金記録を見ることができる状態となっていたことも判明した。
マイナカードの活用拡大と普及促進は、新型コロナウイルス感染拡大時に迅速に給付金を支給できなかったことを教訓としている。しかし、改正関連法では2024年秋に現行の保険証を廃止することが定められるなど、拙速とも言える措置が目立っている。政府がどこまで真摯(しんし)な姿勢でマイナカードの活用に取り組んできたのかが問われている。
一連の混乱について、河野氏は「責任は大臣たる私にある。何らかの形で私に対する処分はしなければならない」と述べているが、本当に自らを処分する覚悟が求められている。ただ「ポスト岸田」を狙って存在感をアピールしようとするだけでなく、結果責任は当然求められよう。
もう一つ指摘したいのは、重要情報の漏洩に対する政府の認識の甘さである。これはマイナカードに限らないが、日本では国家機密などを保護する意識が他国と比べて不十分だと言わざるを得ない。こうした意識が政府内に十分に浸透していれば、個人情報を扱うマイナカードの普及ももっと慎重に進めたはずである。
首相は「マイナカードは社会をデジタル化する上で重要なインフラであり、普及に努めないといけない」と述べ、引き続き活用を進める考えを強調した。そうであれば、ただ形だけ普及させるだけでなく、マイナカードの必要性について十分な理解を得た上で丁寧に手続きを進めるべきだ。
セキュリティーを万全に
さらに国民が安心して利用できる制度とするには、サイバー攻撃への備えなど、情報セキュリティーを万全にしなければならない。







