トップオピニオン社説【社説】改正入管法成立 不法滞在への厳正な対処を

【社説】改正入管法成立 不法滞在への厳正な対処を

外国人の収容・送還ルールを見直す改正入管難民法が成立した。国外退去処分を受けた外国人の長期収容を解消するためのものだ。国内の治安維持のためにも適切な運用を求めたい。

仮放免後の逃亡、犯罪も

現行法では、不法残留となったり、重大な罪を犯したりした外国人は強制送還の対象となり、送還時まで原則全員、入管施設に収容される。ところが難民認定を申請している間は送還が停止されるため、申請を繰り返すケースがあり、収容長期化の要因となっている。長期収容で健康を損なえば人権問題にもなりかねない。

改正法では、3回目以降の申請者や3年以上の実刑を処せられた者は送還可能となる。申請の悪用防止につなげなければならない。

また現行法には、収容を一時的に解除する「仮放免」制度があるが、逃亡に対する罰則や身元保証人の法的義務はない。仮放免後の逃亡者は2022年末時点で約1400人に達し、仮放免中に逮捕された者は22年、361人に上った。逮捕容疑は殺人未遂や覚醒剤取締法違反などで、実刑判決を受けた事例も出ている。

改正法では、親族や友人などの「監理人」を付けることを条件に施設外での生活を認める「監理措置」制度を導入。監理人は対象者の生活状況などを報告する義務を負い、怠れば過料を科される。施設収容の場合も3カ月ごとに必要性を見直し、監理措置への移行を検討する。長期収容の解消に向けた制度だが、治安が脅かされないように活用する必要がある。

一方、難民条約上の難民に該当しない避難民を「補完的保護対象者」(準難民)として保護する制度も新設。認定されれば難民同様に定住資格が付与される。ロシアによるウクライナ侵略で日本に避難したウクライナ人もいる。今後も同様の事態が生じることを想定し、法整備を万全にすべきだ。

看過できないのは、入管行政への信頼が損なわれる事例が相次いだことだ。名古屋市の入管施設では21年3月、30代のスリランカ人女性が死亡。女性が体調不良を訴えても、施設側は適切な対応を取らなかったことが明らかになっている。

入管難民法の改正案は21年の通常国会で審議されていたが、この問題で成立が見送られた。収容者の人権を軽視し、法改正を遅らせた政府は猛省しなければならない。

今国会の審議でも、大阪出入国在留管理局の常勤医師が酒に酔った状態で収容者を診察した疑惑や、難民認定の審査が特定の難民審査参与員に集中していた問題が発覚した。入管行政を担う出入国在留管理庁は「日本人と外国人が互いに信頼し、人権を尊重する共生社会の実現を目指す」としているが、これでは信頼回復には程遠いと言わざるを得ない。

事情への十分な配慮を

今回の法改正では、3回目以降の難民申請でも本国での迫害の恐れなど「相応の理由」があれば送還は停止される。不法滞在する外国人への厳正な対処と共に、それぞれの事情への十分な配慮が求められる。

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