【社説】IPEF会合 日本は結束強化へ役割果たせ

日米など14カ国が参加する経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の閣僚会合が米デトロイトで開催され、サプライチェーン(供給網)分野で実質合意した。「経済的威圧」を強める中国への依存を減らすため、参加国の結束強化が求められる。

対中依存低減を図る

昨年9月の交渉入りで合意して以降、初の成果となる。正式な協定文書をまとめ、早期発効を目指す。供給網に関する多国間協定は初めて。

電気自動車(EV)などに不可欠なレアアース(希土類)の生産は中国のシェアが高く、相手国の貿易や投資に圧力をかける「経済的威圧」に利用されてきた。発表された共同声明は「供給網の強靱(きょうじん)性、効率性、持続可能性、透明性を向上させる」と明記した。

今回の実質合意で各国は、供給網の断絶が懸念される重要な分野や物品を特定。調達先を広げたり、物流を向上させたりする協議会を発足させる。供給網が断絶した場合、各国が協力して支援する体制も整備する。対中依存低減を図って経済安全保障を確立すべきだ。

 IPEFは、環太平洋連携協定(TPP)を離脱した米国が、インド太平洋地域への関与を求める日本の要請に応え、昨年5月に発足を宣言した枠組みだ。民主主義国の日米豪印などが参加し、供給網のほか「貿易」「クリーン経済」「公正な経済」の4分野で共通ルール作りに取り組んでいる。

 IPEFを主導する米国は、議長国を務める11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、全4分野での合意を実現したい考えだ。合意を急ぐ背景には、今後起こり得る台湾有事に対する危機感がある。半導体製造に強みを持つ台湾を巡り、米中の緊張関係は高まる一方だ。

ただIPEFには関税自由化の恩恵がないため、結束維持は簡単ではない。先進国とは経済の発展度合いが異なる東南アジアなど新興国が多く参加するため、残り3分野の合意は見通せないのが現状だ。

東南アジア諸国の中には中国を刺激することを避けようとする国も多く、中国への対抗色が前面に出れば離脱する国が相次ぐ恐れもある。日米両国は今回の合意を連携強化につなげる必要がある。

特に日本は、先進国と新興国の「橋渡し役」を担うことが求められる。今回の閣僚会合に出席した西村康稔経済産業相は「質の高いルールとメリットのバランスが取れるように、これからも(IPEFを)主導していきたい」と述べた。新興国にメリットを提示できるかどうか、日米の手腕が問われる。

米のTPP復帰も不可欠

中国に対する牽制(けんせい)を強めるには、米国のTPP復帰も欠かせない。TPPは農産品や工業品の関税撤廃に加え、中国にとっては順守が難しい知的財産権保護などの厳格なルールを定めた自由貿易協定(FTA)だ。

だが、米国は労働組合などの強い反発で早期復帰には慎重姿勢を示している。TPPを主導する日本は、粘り強く復帰を働き掛けるべきだ。

spot_img
Google Translate »