【社説】トルコ大統領選 路線大国との友好保て

エルドアン大統領(EPA時事)

トルコの大統領選挙で、現職のエルドアン氏が再選を果たした。欧米の民主主義陣営とロシアや中国など権威主義国家との間で展開する独自の外交路線は今後も継続されるとみられる。ロシアのウクライナ侵攻では両国の仲介役として存在感を高めるトルコと、日本は今後も友好関係を維持していくべきだ。

エルドアン氏が勝利

エルドアン氏は、決選投票で野党統一候補のクルチダルオール氏を得票率で約5ポイント上回って辛勝した。クルチダルオール氏は、20年以上にわたる長期政権と権力の集中を批判、西側諸国との関係強化を訴えたが、及ばなかった。

トルコは過去10年で通貨リラの価値が対ドルで10分の1に目減りし、昨年10月にはインフレ率が前年比で85%にも達して国民の不満が高まっていた。その一方で、エルドアン氏は、ロシアとウクライナ両国との緊密な関係を生かし、ウクライナからの穀物輸出の再開で仲介役を果たし、地域大国としての存在感を高めた。

エルドアン氏は、イスラム主義の傾向を強める人々に、それらの外交成果などをアピール。経済的な失政や権力の集中への批判より「強い指導者」を求める国民の声が上回った。

エルドアン氏の再選に対し、ロシアのプーチン大統領は「あなたは国家主権を強化し、独自の外交政策を追求してきた。再選は当然だ」と祝意を表した。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領はツイッターで「われわれの戦略的パートナー関係の強化と、欧州の安全・安定に向けた相互協力の発展を期待する」と書き込んだ。

トルコは、NATO(北大西洋条約機構)の一員でありながら、ロシアから地対空ミサイルS400を購入し、欧米との関係が悪化した。一方、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟問題では、フィンランドの加盟は承認したが、スウェーデンに対してはトルコの非合法武装組織「クルド労働者党」(PKK)に連なる活動家をかくまっていることを理由に保留。クルド系活動家らの身柄引き渡しを加盟承認の条件としている。

今後は、この問題が焦点となる。エルドアン氏の当選でトルコ側の承認条件はハードルが低くなるとの見方もあるが、予断は許さない。とはいえ、トルコがぐっとロシア、中国寄りになると考えるのは早計だ。

トルコは天然ガスなどエネルギー面でロシアへの依存度が高く、経済的関係は強い。中国との関係も経済面が強い。欧米諸国と中露との間でバランスを取りながら、地域大国としての存在感を高め、ひいてはオスマン帝国時代のような盛時を再現することが狙いだ。

大統領選挙では、独自の外交路線で一定の成果を収めたことが、権力の集中や経済情勢の悪化という問題を相対化したように、トルコ国民には欧米諸国とは違った物差しがあることを直視すべきだろう。

日本は戦略的関係強化を

トルコと歴史的に友好を維持する日本は、トルコが西側との関係を悪化させ、中露寄りになることを防ぐためにも、戦略的な関係を強化する必要がある。

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