【社説】宇宙安保構想 防衛に不可欠な米英との連携

政府は宇宙分野に関する安全保障構想原案をまとめ、中国やロシアの「衛星攻撃衛星(キラー衛星)」などに対応するため米国、英国、オーストラリア、カナダの4カ国が共同運用する「連合宇宙運用センター」に参加する方針を掲げた。

ロシアのウクライナ侵略など予想外の有事が起きており、宇宙に害が及ぶ事態の回避に努めなければならない。

中露のキラー衛星に対処

今日、人工衛星を用いた宇宙利用は天気予報、防災、救難、通信、運輸など日常生活に欠かせなくなっている。ロシアのウクライナ侵略を巡っては、偵察による戦況分析はじめ軍事活用も注目されるようになった。衛星がキャッチした情報は地球規模で軍事、商業に利用されており、有事にあってはキラー衛星の電磁波やレーザーによる攻撃対象になる可能性がある。

また、人工衛星の打ち上げの増加に伴い、残骸などが宇宙ごみ(デブリ)となり、衝突して衛星を破損するリスクも深刻だ。とりわけ中国は地上から発射したミサイルによって人工衛星を破壊する実験を行い、成功したことによって大量の宇宙デブリを発生させている。

さらに中国は2010年以降、キラー衛星による電磁波攻撃やレーザー攻撃の実験を繰り返しており、ロシアもキラー衛星の開発を進めているとされる。わが国は昨年、日本上空の宇宙空間を守るため、中露のキラー衛星の活動を妨害する機能を持つ監視衛星を運用する方針を固め、新たな宇宙の脅威へ対応することを日米首脳会談などで確認している。

今回の構想原案では、より踏み込んで宇宙が外交・防衛・経済・情報など国力を巡る地政学的競争の主要舞台となったとの認識を示し、中露を念頭にして衛星攻撃能力の開発・配備に危機感を表明、脅威が急速に拡大していると訴えている。宇宙空間の安全保障は喫緊の課題と言えよう。

わが国が参加を目指す米国など4カ国の「連合宇宙運用センター」は、宇宙空間の全ての衛星、宇宙デブリなど約2万5000の対象物、自国・関係国の衛星への妨害や攻撃を24時間体制で監視し、対応に当たっている。軍事的にも衛星網の防衛は死活的に重要になっている。

わが国では、北朝鮮の弾道ミサイル発射実験で、衛星を通じて全国瞬時警報システム(Jアラート)が発令される事例も起きている。衛星が国民の避難など防衛に果たす役割は増すと考えられよう。中露のわが国周辺での軍事活動も警戒の度を増しており、宇宙空間の脅威の高まりにも日米同盟はじめ同志国との連携を強めて対処しなければならない。

憲法問題をクリアせよ

一方、宇宙空間での脅威の対処は事実上の武力衝突であり、戦争に近いものだ。既に米軍は宇宙軍を発足させた。わが国も航空自衛隊を「航空宇宙自衛隊」へと名称変更する方針だ。宇宙を巡る防衛は地球規模の連携を必要とするもので、その際に機密情報保護の厳格化はもちろん、集団的自衛権の行使について憲法問題をクリアすることが望ましい。

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