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【社説】ジャニーズ性被害 メディアの責任は大きい

ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川前社長による性被害問題について、藤島ジュリー景子社長が公に謝罪した。しかし、動画と文書を公表するだけで記者会見は行わず、形ばかりの謝罪で問題の鎮静化を狙うものでしかない。真相の徹底解明が求められる。

視聴率のため取り上げず

喜多川前社長による性的被害については、以前から元所属タレントの告発などがあったが、メディアはこれをほぼ黙殺してきた。性被害の継続・拡大に対するメディアの責任は大きい。この問題も含めての徹底解明が必要だ。

事務所が今回、謝罪に至ったのは、元所属タレントによる告発や、今年3月に英BBCが喜多川前社長の性加害のドキュメンタリー番組を放送したことなどが発端となった。

藤島社長は、Q&A形式の「当社の見解と対応」の中で、元所属タレントによる告発について「個別の告発内容について『事実』と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではなく、さらには憶測による誹謗中傷等の二次被害についても慎重に配慮しなければならない」として曖昧にしている。

元所属タレントによる性被害の訴えは、いずれも事務所に所属した未成年時、何も分からない弱い立場で、行為を拒否できなかったというものだ。タレントとなる夢を抱く少年の弱みに付け込んだ卑劣な行為である。

前社長の性加害については、かなり以前から訴えがあった。昭和63年に元フォーリーブスの北公次さんが告発本を出版。平成11年に「週刊文春」が特集を組んだ。事務所側は文春を名誉毀損(きそん)で訴えたが、東京高裁が性加害の事実を認定。16年に最高裁で判決が確定している。

にもかかわらず、この問題をメディアが大きく取り上げることはなかった。判決以降も性被害は続いたとの証言もあり、メディアの責任は大きい。

背景には、特殊な世界である芸能事務所での出来事ということもあっただろう。しかし何よりも、多くの人気タレントを抱える事務所に対して、視聴率確保のため最大限気を配らねばならなかったためである。メディアと事務所の一種の馴(な)れ合いがあった。

この問題は、ここまで事実が明らかになった現在でも、メディアとくに民放の抑制的な取り扱いが際立っている。事務所への忖度(そんたく)としか思われない。視聴率を稼ぐためには、人権や青少年の健全な育成など二の次と考えている証拠である。

前社長による性被害の告発は広がっている。被害を受けた側にとっては忌まわしい経験であるが、それでも実名で告発する人も出ている。自分のような被害に遭う少年が出ないようにとの深刻な思いからであると思われる。

第三者委設置が不可欠

多くの少年の夢を食い物にした闇の過去を持つ芸能事務所が、その過去を清算せずに、活動を続けることを容認してはならない。真相を徹底的に究明せずには、再発防止は覚束ない。そのためには、事務所側が後ろ向きな第三者委員会の設置が不可欠である。

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