トップオピニオン社説【社説】1~3月GDP 内需底固めへ賃上げ継続を

【社説】1~3月GDP 内需底固めへ賃上げ継続を

2023年1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で前期比0・4%増、年率では1・6%増と3期ぶりのプラス成長になった。

コロナ禍からの経済活動の正常化に伴い個人消費の増加が景気の持ち直しを支える一方、海外経済減速の影響から回復の力強さや持続に課題も残る。海外にマイナス要因が多く期待が持ちにくい中、賃上げの継続で内需の好循環を実現したい。

好調だった個人消費

1~3月期は、GDPの増減に与える影響(寄与度)が内需プラス0・7%、外需マイナス0・3%と内需主導となった。

好調だったのは二本柱である個人消費と設備投資。個人消費はコロナ禍からの経済活動の正常化で前期比0・6%増と4期連続のプラスで、外食や宿泊などのサービス消費が伸びた。また供給制約の緩和で、自動車販売が回復した。

設備投資も0・9%増と2期ぶりのプラスで、国内販売が好調だった自動車への投資支出の増加が寄与した形である。

もちろん、個人消費も設備投資も力強さはまだない。とりわけ、設備投資は少し前までは2桁の伸びを示していたことを思えば雲泥の差だが、それでも内需全体で外需の悪さをカバーし、3期ぶりのプラス成長を実現させた意義は大きい。

コロナ禍から丸3年。コロナ前と比べ回復水準はまだ6~7割というところも多く、完全回復宣言にはまだ早いが、そう遠くないことも確かである。同時発表の22年度GDP金額は、実質で547兆円と、コロナ前の19年度(550兆円)をわずかに下回った。

成長を下押しし、また設備投資を弱くさせているのが、外需すなわち海外経済減速の影響である。特に輸出は4・2%減と6期ぶりのマイナスで、統計上は輸出に分類され、コロナ制限の緩和・撤廃で伸びたインバウンド(訪日外国人)消費を打ち消した。また、世界的な半導体市況の悪化を受けた半導体製造装置の落ち込みや自動車の減少なども響いた。

海外経済の減速は1~3月期にとどまらず、4~6月期以降も影響しそうである。米欧の急速な利上げから銀行破綻が相次いだ。買収などで破綻は収束したとはいえ、金融不安は依然としてくすぶる。最近では米国の債務上限問題も決着の不透明さから大きな懸念材料として浮上している。さすがに、最終的には決着すると期待するが、何とも人騒がせなことである。

 海外の影響を最小限に

海外経済で当面厳しさが避けられないだけに、内需の好条件を確固たるものにしたい。コロナの感染症法上の位置付けが「5類」に移行され、外出の機会は今後ますます増えると期待されるからだ。

食品など依然値上げが相次ぐ中でも消費がそう落ちずに底堅く伸びているのも心強い。生活必需品が多く、買い控えが簡単にできないという面もあるが、今年の賃上げの波が中小企業にも広がっていることも確かであろう。海外経済の影響を最小限にとどめ、経済の好循環を実現するためにも、賃上げの継続でその基盤を着実に整えたい。

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