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【社説】広島サミット 中露にG7の結束を示せ

先進7カ国首脳会議(G7サミット)がきょう、広島市で開幕する。

ウクライナを侵略したロシア、海洋進出をはじめ覇権主義的行動を強める中国、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威などで国際秩序が揺らぐ中、法の支配を守り抜くため、日本は議長国として議論を取りまとめる役目を担う。価値を共有するG7の結束を示すべきだ。

停戦見えぬウクライナ

サミットの最大のテーマは、国際法を踏みにじる中露両国への対応だ。首脳声明にはG7が結束して「法の支配に基づく国際秩序を堅持する」と明記する方向となっている。世界の安定に向け、G7の枠組みが重要性を増している。

昨年2月に始まったロシアによるウクライナ侵略は、停戦への糸口が見えない。サミットでは、ロシア軍の即時撤退を求めるとともに、ロシアへの厳しい制裁とウクライナへの強力な支援の継続を確認すべきだ。

ロシアは「核の威嚇」を続けている。クリミア半島など占領地を死守し、西側諸国のさらなる介入を阻止するための最後の手段として、核兵器を使う可能性を排除していない。

地元が広島の岸田文雄首相は「核兵器のない世界」構築がライフワークで、サミットでは核軍縮も主要議題の一つ。核の非人道性を強調し、ロシアに「核使用は決して認められない」というメッセージを発する上で、核保有国を含むG7がどこまで結束できるかが問われよう。核廃絶の理想だけでなく、核抑止力強化が求められる現実を直視することも欠かせない。

一方、中国は沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返し、南シナ海の軍事拠点化を進めているほか、習近平国家主席は台湾の武力統一も辞さない構えを見せている。サミットの首脳宣言には「台湾海峡の平和と安定の重要性」などの文言を盛り込む方向だ。中国による台湾への軍事的威圧に、G7が一致して対抗する必要がある。

中露を巡っては、貿易や投資を制限して圧力をかける「経済的威圧」も問題視されている。サミットでは、サプライチェーン(供給網)強靱(きょうじん)化など経済安全保障に関する成果文書で、G7各国の外交当局実務者で構成される「経済的威圧に関する協議体」の発足を宣言するとともに、標的となった国々を支援するとも明記する。

サミットには韓国やオーストラリアのほか、「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の代表格インドや、アフリカ連合(AU)の議長国コモロなど8カ国の首脳を招待した。重要鉱物の中国依存から脱するため、グローバルサウスと連携した戦略物資の供給網整備についても討議する。経済安保分野でも中露への牽制(けんせい)を強めるべきだ。

法の支配浸透へ連携を

ウクライナのゼレンスキー大統領もサミットにオンラインで参加する予定だが、来日して対面で出席するとの見方もある。広島でのサミットが、ウクライナへの連帯を示す場になるとともに、法の支配の浸透に向け、G7の枠を超えた連携を深めることができるよう、岸田首相は指導力を発揮してほしい。

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