
東京・銀座の高級時計店に覆面姿の3人組が押し入って腕時計などを奪う事件が発生した。
逮捕された4人の少年は、SNSで強盗の実行役を募集する「闇バイト」に応募した可能性がある。警察は実行役を使い捨てにして利益を得る指示役の摘発を急がなければならない。
少年4人が逮捕される
事件では、白い覆面をかぶった3人組が店に押し入り、店員に刃物を示して「伏せろ。殺すぞ」などと脅迫。バールのようなものでガラスケースを割って高級腕時計を奪い、白いワンボックスカーで逃走した。この車は赤坂の路上で乗り捨てられており、警視庁が付近のマンション内に侵入していた16~19歳の少年4人を現行犯逮捕した。
現場は高級ブランド店が立ち並ぶ一角で、周囲には多くの買い物客や通行人がいた。衆人環視の中で約10分にわたって犯行を続けたことは、大胆不敵というよりも無謀である。強奪された腕時計は74個、被害総額は計2億5000万円相当に上ったが、ほとんどが回収された。店員にけがはなかった。
警視庁は一連の広域強盗事件と同様、指示役がいる可能性が高いとみている。広域強盗事件では「ルフィ」や「キム」と名乗る人物が、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」でフィリピンから実行役に指示を出していた。
今回逮捕された4人は互いのことを「知らない」と話しており、闇バイトの募集に応じた可能性がある。闇バイトは高額の報酬をうたっているが、実行役は報酬を受け取る条件として免許証など身分証明書を預けるよう強制されるほか、実家の住所など家族の個人情報も握られてしまう。
指示役に脅され、逮捕されることが分かっていても犯罪に走らざるを得ない状況に追い込まれるのだ。大金に目がくらみ、安易に誘いに乗っても泥沼にはまるだけである。
警察庁によると、闇バイトに絡む強盗・窃盗事件は2021年夏以降、少なくとも14都府県で五十数件発生。60人以上が逮捕されたが、10~20歳代の若者が多い。犯罪組織が実行役を使い捨てにすることは断じて許されない。
都内では広域強盗事件の収束後も強盗事件が相次いでいる。渋谷や表参道、池袋などの繁華街で主に発生しており、上野では今年3月から3カ月連続で貴金属店などが被害を受けた。広域強盗事件とは別の指示系統の存在も指摘されている。
警察は指示役の逮捕にも全力を挙げるべきだ。そうしなければ新たな実行役が集められ、犯罪が繰り返されることになる。SNS上の闇バイト募集の書き込みを削除要請の対象にするなど、未然防止にも力を入れなければならない。
店に求められる自衛策
相次ぐ事件では、高級腕時計が狙われる傾向がある。こうした品物を扱う店では、自衛策も求められよう。陳列ケースを強化ガラス製にすることや、品物に小さい全地球測位システム(GPS)端末を付けることなども検討してほしい。官民が協力し、これ以上の治安悪化を防ぐ必要がある。