【社説】サイバー攻撃 「能動的防御」の導入急げ

発足したサイバー防衛隊の隊旗授与式で、木村顕継司令(右)に隊旗を手渡す岸信夫防衛相(当時)=3月17日午前、防衛省
発足したサイバー防衛隊の隊旗授与式で、木村顕継司令(右)に隊旗を手渡す岸信夫防衛相=3月17日午前、防衛省

サイバー攻撃への対処を巡って、防衛省は今後5年間で専門の自衛隊員を現在の4倍超に増やすなどし、要員を約2万人体制とする。サイバー防衛体制の脆弱性を克服すべきだ。

自衛隊の防衛体制を拡充

防衛省の計画では、サイバー防衛隊など専門部隊を2023年度末までに約2200人、27年度末には4000人に増やす。陸海空のシステム運用員もサイバー攻撃に対応できるように教育し、計約2万人体制で防衛に当たるとしている。

防衛省によると、自衛隊の対処要員は22年度末時点で、サイバー防衛隊約540人と陸海空各自衛隊の専門要員合わせて約890人。サイバー攻撃部隊だけで約3万人とされる中国には遠く及ばず、米国(約6200人)や北朝鮮(約6800人)と比べても相当少ない。

これでは、外国のサイバー攻撃による重要インフラの機能停止、国民情報・知的財産の窃取、選挙への干渉などを十分に防ぐことができない。特に電力や医療などの重要インフラに重大な支障を来せば、国家と国民の安全が脅かされよう。

防衛省は増員に当たり、教育体制を抜本的に強化する。23年度末に神奈川県横須賀市の陸自通信学校を「陸自システム通信・サイバー学校」に改編。また、中学校の卒業生が入る陸自高等工科学校では「システム・サイバー専修コース」の内容を充実させるほか、この分野に強い幹部を育成するため、防衛大の新学科設置を検討する。機密保持のため、自前での育成を目指すことは理解できる。

さらに重要なのは、サイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入に向けた体制整備だ。これはシステムへの侵入を防ぐだけでなく、相手への妨害や無力化といった反撃的な運用を行うものだが、攻撃元の情報を収集・監視したりシステムに侵入したりする行為は、不正アクセス禁止法や個人情報保護法などに抵触する恐れもある。法整備を急ぐ必要がある。

政府が21年9月に決定した「サイバーセキュリティ戦略」では、中国、ロシア、北朝鮮を「脅威対象」と明記。米国、オーストラリア、インドなどとの連携強化で対抗する方針を打ち出している。

台湾統一を目指す中国は、19年9月から20年8月までの1年間に台湾の政治・経済・軍事の重要機関へ14億回以上のサイバー攻撃を仕掛けたとされる。また国連安全保障理事会の制裁委員会の専門家パネルによれば、北朝鮮は22年、サイバー攻撃で6億~10億㌦(約790億~1300億円)の暗号資産を窃取し、核・ミサイル開発の資金源としている。こうした事例は日本にとっても重大な脅威だ。サイバー攻撃に対処するには国際協力の強化も求められよう。

対中抑止力の向上を

バイデン米政権は今年3月に公表した「国家サイバーセキュリティー戦略」で、中国について「政府機関と民間企業の双方のネットワークに対し、最も広範、活発、持続的に脅威を与えている」と指摘した。日米などの民主主義国は、サイバー空間でも対中抑止力を向上させる必要がある。

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