とケニアのルト大統領=3日、ナイロビ(EPA時事).jpg)
岸田文雄首相が広島市で開く先進7カ国首脳会議(G7サミット)を前にアフリカ4カ国とシンガポールを歴訪し、各国首脳と「法の支配」に基づく国際秩序を維持する重要性で一致した。「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現につなげるべきだ。
関与強める中露両国
アフリカは豊富な天然資源や増加する人口を背景に経済面で大きな潜在力を持つとともに、南半球などの新興・途上国「グローバルサウス」の一角を占める。首相はアフリカでエジプト、ガーナ、ケニア、モザンビークを訪問した。
ウクライナ侵略を続けるロシアや覇権主義的な動きを強める中国は、アフリカへの関与を強めている。ロシアのラブロフ外相は1~2月、アフリカ7カ国を歴訪し、中国の秦剛国務委員兼外相も初の外遊先にアフリカを選んだ。首相の今回の歴訪には、普遍的価値を共有する国を増やし、中露を牽制(けんせい)する狙いがあった。
しかしグローバルサウスは実利優先の傾向が強く、欧米や日本による対露制裁が広がりを欠く要因とも指摘されている。特にエジプトやモザンビークは中露と関係が深く、取り込むことは簡単ではない。
まずは、協力できる分野で関係を強めていくことが求められよう。その一つがスーダン情勢だ。首相はエジプトのシシ大統領との会談で、国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」による戦闘が続くスーダンについて、早期の事態沈静化と民政移管に向けて緊密に連携していくことを確認した。日本は、法の支配に基づく国際秩序が地域の安定につながることを粘り強く訴えていく必要がある。
またガーナとモザンビークは現在、日本と共に国連安全保障理事会の非常任理事国を務めている。首相と会談したガーナのアクフォアド大統領は「現在の安保理(常任理事国)は第2次世界大戦の勝利国であり、現実を反映していない。改革を何としても進めなくてはならない」と語った。
野口英世博士が黄熱病の研究中にガーナで亡くなったことはよく知られている。日本はガーナとの絆を生かし、国連の機能強化に向けて協力してほしい。
ケニアも日本にとっては重要な国だ。FOIP構想は、2016年8月に安倍晋三首相(当時)がケニアを訪問した時に打ち出され、日本はケニアをFOIPの「同志国」と位置付けている。FOIPはインド洋と太平洋に面したアジアとアフリカを結ぶ地域の経済発展と安定を目指す構想だ。
持続可能な成長を促せ
中国の経済支援を巡っては、インフラ整備を進める一方で、相手国を「借金漬け」にして支配を強める「債務のわな」が問題化している。ガーナは昨年12月、事実上のデフォルト(債務不履行)に陥った。
安倍氏はFOIPを打ち出した際、インド太平洋地域について「力や威圧と無縁で、自由と法の支配、市場経済を重んじる場として育てる」と述べた。日本は法の支配を浸透させ、持続可能な成長を促す支援策を進めるべきだ。