【社説】テロ対策 メディアは報道の仕方改めよ

今月は広島市で先進7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれる。日本では昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件に続き、先月には岸田文雄首相の遊説中に爆発物が投げ込まれる事件が発生するなど、政治家を標的にしたテロが相次いでいる。サミットに向けて警察が万全の対策を講じるだけでなく、メディアのテロに対する報道の仕方も改めるべきだ。

模倣犯の出現を招く

岸田首相に爆発物を投げ付けた木村隆二容疑者は、安倍氏銃撃事件を引き起こした山上徹也被告の模倣犯だとみていい。安倍氏も岸田首相も選挙の遊説中に狙われた。山上被告が使用した銃と木村容疑者の爆発物が、共に手製であることも似通っている。

山上被告は、母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に多額の献金をしたため、家庭が崩壊したことで教団を恨み、教団と密接な関係があると思い込んで安倍氏を殺害した。身勝手な動機で人命を奪ったことは決して許されない。

ところが主要メディアは、旧統一教会を「反社会的団体」と決め付け、山上被告に同情的な報道を繰り返した。報道の影響を受け、山上被告の元には多額の支援金などが差し入れられ、減刑を求める署名サイトもつくられた。

さらに過激派の元メンバーが山上被告をモデルとする映画を制作し、安倍氏の国葬に合わせて上映するなど、安倍氏に批判的な人たちを中心に山上被告を英雄視する風潮さえ見られた。作家で法政大教授の島田雅彦氏が、インターネット番組で「暗殺が成功して良かった」とテロを容認するかのような発言を行ったことも非常識だ。木村容疑者が事件を起こしたのは、番組が配信された翌日である。

メディアの報道は政治にも影響を及ぼした。岸田首相は自民党と旧統一教会との関係断絶を宣言。さらに、法人などによる悪質な寄付の勧誘行為を禁じた被害者救済新法が制定されるに至った。結果的に、山上被告は暴力によって自らの目的を果たしたことになる。このことは大きな禍根を残したと言えよう。

木村容疑者によるテロは、山上被告に同情的な報道が誘発したと断じざるを得ない。模倣犯の出現を許したメディアの責任は極めて重い。

海外では、テロリストの人柄や思想などはできる限り報じないのが普通だ。ニュージーランドのモスク(イスラム礼拝所)で2019年3月、50人が死亡する銃乱射テロ事件が発生した際、アーダーン首相(当時)が犯人の男に対して「テロの目的の一つは、悪名をとどろかせることだ。だから私は今後、男の名前を言うことはない」と述べたことは、模倣犯の出現を防ぐ上で重要だったと言える。

 サミットでの防止徹底を

日本の主要メディアは、これまでの山上被告への同情的な報道を改めなければならない。そうしなければ、山上被告や木村容疑者に続くテロリストが現れかねない。銃や爆発物の製造法がネット上にあふれていることも極めて危険な状況である。警察はサミットでのテロ防止策を徹底すべきだ。

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