2070年の日本の推計人口は8700万人で、このうち外国人が1割を占める――。国立社会保障・人口問題研究所がこのような推計を発表した。出生率を高める大胆で実効性のある施策を断行しなければ、人口減の流れを止めることはでない。
高齢者の割合4割近くに
推計では、出生や死亡などの最近の動向を踏まえ、20年国勢調査の結果を出発点に70年までの人口を計算した。女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は、20年実績値は1・33だが、70年時点は中位のケースで1・36と推計。平均寿命は男性が85・89歳、女性が91・94歳まで伸びるとした。
外国人の入国超過数は、新型コロナウイルス感染拡大前の状況が続いたと仮定し、17年の前回推計の年7万人から16万人へ増えると見込んだ。70年の外国人人口は939万人で総人口の10・8%に伸びると想定した。
この条件の下での推計で、総人口が1億人を割る時期は3年遅くはなった。しかしこれは主に外国人の入国増で人口減のスピードが緩やかになると見込んだもので、少子高齢化の大きな流れは変わらない。
70年には、65歳以上の高齢者は3367万人で、総人口に占める割合は38・7%に上昇。一方、15~64歳の生産年齢人口は4535万人となり、1人の高齢者を1・3人で支えなければならなくなる。
最も重要な指標である合計特殊出生率は、前回推計の1・44より低い1・36との仮定だが、人口規模の維持に必要な2・07には程遠い。政府が目標に掲げる、若い世代の結婚や出産の希望がかなった時の「希望出生率」1・8からも遠い。
岸田文雄首相は「これから6年から7年が少子化傾向を反転できるかのラストチャンス」と強調し、3月に「異次元の少子化対策」のたたき台を策定した。財源確保が注目点となっているが、それ以前に、子育て支援の増額を柱とした対策では、実効性は期待できない。
未婚化の流れを変えることなくして、少子化の流れを反転させることはできない。そのためには結婚し、子供を産みたいという若者たちが、経済的な理由で断念するような状況をなくすことだ。政府がリードして賃金アップや雇用の安定を実現させなければならない。その目標に照準を合わせた新たな制度の創設に知恵を絞る必要がある。
しかし、そのような環境がある程度整ったとしても、結婚を望まない若者が増えているのが問題だ。価値観の多様化や個人主義的傾向の強い都市型のライフスタイルが影響していると思われる。家族の在り方の多様化という名の下に、最終的には家族の解体を目論む「おひとりさま」幻想が振りまかれてきた。家族や結婚の価値が再認識されるように、政府はより踏み込んだ施策を進める必要がある。
移民受け入れは慎重に
労働力確保のための外国人の受け入れが、移民政策への転換となることは避けなければならない。なし崩しの実質的移民受け入れは、予想外の問題を引き起こす可能性が高い。日本は国柄からして、移民の受け入れには慎重であるべきだ。