【社説】中国「海外警察」 容認できぬ主権、人権侵害

米連邦捜査局(FBI)は、ニューヨークに中国の「警察拠点」を違法に設立し、運営に関与したとして61歳と59歳の男2人を逮捕した。外国に警察の出先機関を秘密裏に設け、反体制派の監視や脅迫のために利用することは、明白な主権侵害だ。中国の身勝手な振る舞いは容認できない。

FBIが2人を逮捕

米司法省によると、2人は中国公安当局に協力し、マンハッタンのチャイナタウンにあるオフィスビルに中国の警察拠点を昨年初頭に設置。FBIの捜査後、同年秋に閉鎖された。

2人の主な任務は、米国在住の反体制派中国人を監視し、中国政府に不都合な活動を妨害、遮断することだった。2人は、公安当局との通信の記録を破棄することで、捜査を妨害した罪にも問われている。さらに、米国内の中国人に嫌がらせをしたとして中国の公安当局者数十人が訴追された。

こうした「非公式警察署」を外国に設置することは重大な主権侵害である。また中国による人権弾圧が、海外の民主主義国家にまで及んでいることは、到底看過できるものではない。FBIが2人の逮捕に踏み切ったのは当然だ。

一方、中国外務省は、非公式警察署が「存在しない」と否定している。主権侵害と人権侵害を覆い隠そうとすることは許されない。

スペインに本部を置く人権擁護団体「セーフガード・ディフェンダーズ」が昨年発表した報告書によると、世界53カ国102カ所に中国の非公式警察署がある。米国や欧州のほか、日本も東京・秋葉原など2カ所に存在するとしている。

報告書では、非公式警察署が反体制派の人たちを帰国させるための方法も説明されている。本人に直接接近して脅迫するほか、中国に住む家族への嫌がらせや脅迫、拘束・逮捕などの方法も用いているという。さらに、本人を誘拐して帰国させることもある。卑劣かつ強引なやり方である。

日本でもこうした事例がないか実態解明を急ぐべきだが、政府が調査を行っているようには見えない。昨年には既に問題になっていたにもかかわらず、調査が進まないのは、中国に対する遠慮があると疑われても仕方がない。

非公式警察署は中国大使館や領事館の指揮下にあるとともに、中国共産党の海外情報機関である中央統一戦線工作部(統戦部)が関与している。統戦部の役割は、中国共産党政権の支配を確実にするため、国内外の中国人の忠誠を確保することだ。

一党独裁体制維持のため、中国が警察拠点を海外に置くことは、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値観に反している。アイルランドやオランダなどは既に閉鎖命令を出している。

韓国も、拠点とみられる中華料理店の関係者を食品衛生法違反などの容疑で書類送検した。日本も対応を急がなければならない。

スパイ防止法制定を急げ

こうした事例に効果的に対処するには、スパイ防止法の制定も急務である。

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