衆院4、参院1の計五つの補欠選挙が投開票され、自民党の4勝1敗という結果になった。岸田政権への「中間評価」としては一定の評価を得、信任されたと言っていい。ただ、衆院山口4区以外は接戦を制しての辛勝で、敗北した衆院和歌山1区では日本維新の会の伸長という課題が明確になった。
補選総括し反省必要
岸田文雄首相は「重要政策課題を『しっかりやり抜け』との叱咤(しった)激励をいただいた」と語るが、少子化対策、経済対策などの諸課題に着実に取り組むだけでなく、補選を総括して反省すべき点はただすことも必要だ。
接戦となったのは衆院の山口2区、千葉5区、参院の大分選挙区だった。山口県は安倍晋三元首相の死去に伴う4区と岸信夫前防衛相が病気により引退した2区で行われたが、両区とも自民の“必勝区”だった。
4区は安倍氏の後継をアピールした自民新人の吉田真次氏と立憲民主党から出馬した有田芳生元参院議員が対決。有田氏は旧統一教会批判の急先鋒(せんぽう)で、安倍氏と旧統一教会との関係をひたすら問題視し知名度を上げたいと目論(もくろ)んだが全く浸透せず、吉田氏の獲得票の半分にも達せず惨敗した。2区では岸氏の長男に対する世襲批判が厳しく苦戦したが、約5700票差で勝ち上がった。
政治資金規正法違反で自民を離党した元衆院議員の辞職に伴う選挙となった千葉5区では、「政治とカネ」の問題が厳しく問われた。野党側の候補者擁立が一本化されず分裂したことにより最終的には勝利できたが、党として襟を正し続けなければならない課題だ。
参院大分は元議員が知事選に立候補するため辞職したことに伴って行われた。自民新人の白坂亜紀氏が、立民元議員で共産と社民の支持した吉田忠智氏を抑えて初当選したが、341票の僅差だった。野党が総掛かりで挑んだ場合、苦戦する典型的な例で、与党は今後の選挙戦に不安を残した。
和歌山1区での自民敗北、維新勝利の要因には、統一地方選前半戦の奈良県知事選で維新が初勝利した勢いをもって臨んだことがある。県知事選の背景には、自民奈良県連の決定した新人候補と引退するはずだった現職知事とが立候補し自民分裂の形がつくり出されたことがある。地元を無視して強行し共倒れに至った党本部の責任が問われないままでいいのか。地方議員選での維新の伸長も著しく、自民には関西での選挙戦略の立て直しが求められよう。
安倍氏銃撃事件の経緯についても不明なままで、警察の警備の在り方が国会で議論されることはなかった。今回、和歌山入りした岸田首相の近くに爆発物が投げ込まれた事件は、教訓が全く生かされていないことを証明した。それにもかかわらず、岸田首相は投票日前日に再訪して演説した。与野党は両事件を国会で深掘りし適切な警備体制の確立に努めるべきだ。
重要課題を最優先に
自民の勝利で今後、衆院解散・総選挙の時期が政局の焦点となろう。だが、党利党略に陥らず重要課題への対処を最優先にすることこそが肝要である。