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【社説】スーダン戦闘 一刻も早い邦人の救出を

ジブチに派遣される航空自衛隊のC130輸送機に乗り込む自衛隊員ら 21日午後、愛知県の空自小牧基地

情勢が悪化したアフリカ北東部スーダンの在留邦人退避のため、航空自衛隊のC130輸送機1機が周辺国のジブチに向けて出発した。

準備が整い次第、C2輸送機、KC767空中給油・輸送機各1機も派遣する。一刻も早い邦人救出が求められる。

自衛隊機がジブチで待機

スーダンでは正規軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」による戦闘が続いている。現在のところ邦人約60人の被害情報はないが、世界保健機関(WHO)の20日の発表によれば、約330人が死亡し、約3200人が負傷した。

軍とRSFは2019年のクーデターで手を組み、当時のバシル政権を打倒した。しかし、その後の権力闘争が流血の武力闘争を招いている。RSFは東部にある首都ハルツームを追われても、本拠地の西部ダルフールで抵抗を続ける恐れがあり、東西内戦に発展することが懸念される。

両陣営が停戦を発表しても守られず、病院や住宅地も被害を受ける無差別的な空爆が続き、人道状況は悪化の一途をたどっている。現地住民だけでなく、戦闘に巻き込まれた国連職員も死亡した。邦人保護は時間との闘いになっている。

21年8月にアフガニスタンで行われた邦人退避では、初動の遅れが問題となった。このため自衛隊法が改正され、自衛隊機の派遣要件が緩和された。政府は今回、対応を急ぐ姿勢を強調している。

ただ現地情勢の悪化で、自衛隊機がスーダンに入れる状況ではない。このため、まずジブチで待機させることにした。ジブチは海賊対処活動に当たる海外唯一の自衛隊拠点があり、米国、中国、フランスも軍事拠点を置く。邦人救出に向け、各国との連携も強化する必要がある。

日米韓など14カ国と欧州連合(EU)の在スーダン外交使節団は共同声明で、市民や外交官への攻撃をはじめとする暴力を「最も強い言葉で非難する」と表明。軍とRSF双方に「前提条件なしの即時戦闘終結」を訴えた。国際社会は現地の安全確保のため、あらゆる手段を講じなければならない。

自衛隊はいつでも動けるように救出の準備を整えるべきだ。邦人は居住している地域もさまざまで、輸送機が発着するスーダンの空港まで邦人を自衛隊車両で運ぶ案も想定されている。ただ空港は現在、閉鎖されており、使用できる見通しが立たなければ、ジブチなど周辺国への陸路での退避も考える必要が出てくる。

自衛隊が邦人退避のために陸上輸送を行えば初めてのケースとなる。もっとも陸上での移動は戦闘に巻き込まれる危険性が高いため、慎重な判断が求められよう。

改憲で軍と位置付けよ

政府は昨年末に改定した国家安全保障戦略で、ジブチを「邦人保護の活動拠点として活用していく」方針を示した。

自衛隊がこれまで以上に海外で活躍するには、集団的自衛権行使などを巡るさまざまな制約を取り払う必要がある。そのためには、憲法9条を改正して軍と位置付けるべきだ。

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