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【社説】G7外相会合 中露の国際秩序破壊の抑制を

G7外相会合に臨む林芳正外相(中央奥)ら=18日、長野県軽井沢町(代表撮影)

先進7カ国(G7)外相会合は共同声明で「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」などを強調して閉幕した。ウクライナを侵略しているロシアや武力による台湾「統一」を露骨に主張する中国に対して、G7が結束して反対していくことは極めて重要である。

覇権主義的な動き前面に

国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアが、ウクライナの主権を侵害する国際法違反に対して国連は役割を果たし得なくなっている。同じく常任理事国の中国は南シナ海に進出し、その大部分を「領海」と主張し、フィリピンの抗議にもかかわらず環礁を埋め立てた人工島に軍事施設すら築いている。

世界一広い国土に資源豊富なロシア、依然世界一の人口を維持し経済の急成長を果たした中国。残念なことに両大国とも核兵器を保有し、軍拡を進め、独裁的な長期政権であり、覇権主義的な動きを隠さなくなった。ウクライナ国民の生活を破壊する焦土戦や、台湾海峡での本格的軍事演習など暴走しており、G7はじめ国際的な結束による対抗以外に抑制力が効かない。

共同声明ではロシアのウクライナ侵略を強く非難し、「露軍の即時・無条件撤退を要求」したが、プーチン露大統領は目下のところ聞く耳を持たず、むしろ占領地の視察によって「併合」をアピールするなど侵略の正当化に躍起になっている。このため「対露制裁を強化し、制裁措置を回避する試みに対抗」することや、「第三者に対し、対露支援を停止しなければ深刻なコストに直面すると表明」したことを徹底する必要がある。

イランや北朝鮮など既に国際的な制裁が科されている国が、ロシアに対して無人機や砲弾を供与しており、さらにベラルーシへの核兵器配備などが懸念される。これらの動きに釘(くぎ)を刺す表現だけでなく、代償をもたらす新たな措置も要するだろう。兵器に転用できる半導体を用いる品々の民間流通にも目を光らせる必要がある。

中国に対して共同声明は「国際社会の責任ある一員として行動するよう求める」と自制を促しているが、台湾を万一攻撃すれば、どう臨むのかという踏み込んだ決意をも示してもらいたい。経済的な取引の魅力から、G7の結束が切り崩されてしまいはしないか。そんな不安を抱かせるマクロン仏大統領の訪中があったばかりだ。

またG7外相会合は、「核のない世界」を究極の目標として関与していくとした。大切なことだが、むしろ北欧のフィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟に見られるように「核の傘」が何よりも必要な状況になった。ロシアの核はベラルーシにまで拡散し、北朝鮮は核弾頭ミサイル開発を急ピッチで進めている。

日本は被爆体験伝えよ

国際的な核管理の透明化と核拡散のペースダウンを図る当面の課題も、核大国の大統領が公然と核兵器使用に言及して隣国を侵略する時勢にあっては容易ではない。だが、相互確証破壊理論による核抑止が効かなくなると何があるのか、日本が悲惨な恐怖の被爆体験を伝えることも自制の一助となろう。

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