トップオピニオン社説【社説】陸自ヘリ事故 一刻も早い原因の究明を

【社説】陸自ヘリ事故 一刻も早い原因の究明を

発見された隊員を乗せ、自衛隊施設を出発す る陸上自衛隊のヘリコプター=18日午後、沖縄県宮古島市

沖縄県の宮古島周辺で10人が乗った陸上自衛隊のヘリコプターが消息を絶った事故で、これまでに乗員6人が発見された。

6人中5人の死亡が確認された。殉職した隊員に心からの哀悼の意を表したい。まだ発見されていない4人の捜索に全力を挙げてほしい。

第8師団長ら10人が搭乗

事故に遭ったのは、陸自の多用途ヘリ「UH60JA」。機体は双発で安全性への信頼が厚かった。エンジン2基のうち1基が停止しても飛行が可能で、過酷な環境で任務を行う陸自の特殊作戦の訓練にも使われている。

複雑な海底地形のため、機体が発見されるまで1週間かかった。さらに、深い海で潜水士が活動する「飽和潜水」による捜索で乗員が見つかった。

ヘリには、第8師団のトップ坂本雄一師団長(陸将)らが乗っていた。第8師団は、熊本市の北熊本駐屯地に司令部を置く約5000人の部隊で、九州南部(熊本、宮崎、鹿児島)の防衛警備を担当している。

坂本師団長は3月末に着任したばかりで、部隊を展開させる可能性がある宮古島を上空から視察していた。10人中8人が幹部自衛官で、地形に詳しい宮古警備隊長も搭乗していた。優れた人材を失ったことは残念だ。今回は陸地に近い場所を飛行していたため、救命胴衣の着用義務の対象外だったという。

このヘリは事故の10日前に定期点検を終えたばかりだった。レーダーから消失する2分前に操縦士が空港管制と無線で交信し、正常に会話していたことも分かっている。操縦士らが緊急事態の宣言や異常を知らせる機器の操作など、非常時の対応を取った形跡もない。

緊急時の措置が取れないほど急なトラブルだった可能性がある。2018年には佐賀県で、何らかの原因によるボルト破断で主回転翼が抜け落ちた陸自戦闘ヘリが、ほぼ垂直に墜落する事故が起きている。

今回の事故を受け、陸自は調査委員会を設置し、原因を調べる一方、保有する同型機40機について、災害派遣などを除き、飛行を停止している。まだフライトレコーダー(飛行記録装置)は見つかっていないが、ヘリが飛行できないことで抑止力の低下を招くことがないよう、一刻も早い原因究明が求められる。

南西諸島周辺海域における中国軍の動向は活発化している。今月に入ってからは、中国初の国産空母「山東」が宮古島南方などの太平洋上で艦載機の発着艦を繰り返している。

防衛省は中国軍の活動を警戒し、南西諸島への自衛隊ミサイル部隊の配備を進めている。今年3月に陸自駐屯地を新設した沖縄県・石垣島には、敵の艦艇を攻撃する「12式地対艦誘導弾」などのミサイル部隊を配備。鹿児島県・奄美大島や宮古島にもミサイル部隊を置いている。敵の発射基地などをたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)として、長射程ミサイルの保有や開発、配備も急ぐ必要がある。

 抑止力向上を進めよ

自衛隊は事故の再発防止を徹底するとともに、部隊の練度を高めて抑止力向上を進めることが、日本を守り、殉職した隊員らの遺志に沿うことにもなる。

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