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【社説】総人口減少 価値観に踏み込んだ対策を

UnsplashKevin Gentが撮影した写真

わが国の人口減少の流れを止めるためには、日本人のライフスタイルや価値観にまで踏み込んだ対策が必要だ。戦後、ほとんどタブー視されてきた、この問題に踏み込み、背景にある社会構造の変革なくして、流れを変えることはできない。

都道府県別で東京のみ増

総務省が発表した2022年10月1日現在の日本人の総人口は、前年比75万人減の1億2203万人だった。減少幅は11年連続で広がり過去最大。沖縄県は1972年の日本復帰以来、初めて人口減少となった。

死亡数が出生数を上回る「自然減」は16年連続で、減少幅は73万1000人と過去最大となった。年齢別では、15~64歳の生産年齢人口の割合が59・4%で過去最低だった前年と同水準。65歳以上の割合は29%で過去最高、15歳未満は11・6%で最低となった。

沖縄を含む全ての道府県で人口減となっている中、東京都だけが前年の減少から増加に転じた。新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)で脱東京現象が起きていたが、再び東京への人の流れが戻ってきた可能性が高い。

2020年の国勢調査によると、東京では50歳の未婚率が男性26・4%、女性20・1%で過去最高となった。非婚化は少子化、人口減に直結する。東京の合計特殊出生率は全国最低だ。東京への集中で、地方では結婚適齢期の女性が少なくなる。東京が人口のブラックホールになっているのが現状である。

岸田文雄首相は「異次元」の少子化対策を進めようとしているが、子育て支援の充実だけでは、到底、人口減を食い止めることはできない。東京への一極集中や非婚化の流れを変えない限り、それは不可能だ。

都市型のライフスタイルや価値観は、どうしても個人主義的になる。衣食住の環境、医療サービスが整い、趣味や娯楽に事欠かない。東京の新宿や渋谷など繁華街のある区で女性の未婚率が高いという統計もある。

一方、地方は家族や地域との絆が強く、若い世代が出会えば自然と結婚に結び付き子供が生まれる。一般的に、都市=個人主義的、地方=家族主義的という図式が描かれる。結婚適齢期の若い世代が地方にとどまるか、Uターン、あるいは移住するような流れを本格化させる、政府の強い後押しが必要だ。

新型コロナ蔓延で生まれた東京から地方への移住の動きは、若い世代になお続いている。これをもっと大きな潮流にすべきだ。戦後の高度経済成長期に大きくなった東京への人の流れを変える、都市と地方の社会構造の大胆な変革が求められる。それには、政府機能や首都機能の移転をはじめ、産業政策や教育、社会インフラ、税制などあらゆる分野にわたった総合的な施策を打ち立てる必要がある。

選択肢づくりに知恵絞れ

政府が「産めよ増やせよ」と音頭を取っても限界があり、かえって反発を招きかねない。しかし、家庭を中心とした価値観やライフスタイルへという変化を起こさなければ、人口減を食い止められないのは明らかだ。国民が自ら進んで価値観を移行できるような選択肢づくりに知恵を絞らなければならない。

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