NTT東日本とNTT西日本のインターネット接続サービス「フレッツ光」などが一時利用できない通信障害が発生した。通信インフラの大規模障害で混乱を招いた責任は重い。
通信設備の故障が原因
通信障害は3日朝に東京や大阪、神奈川など16都道府県で発生した。NTT西は約1時間40分後、NTT東は約3時間後に復旧したが、ネット接続のほか「ひかり電話」にも影響が出て、契約者は110番や119番などの緊急通報を利用できない状況となった。通信設備の故障が原因で、両社は関連性を調査している。今回の経緯をしっかりと究明し、再発防止を徹底しなければならない。
松本剛明総務相は「(電気通信事業法上の)重大な事故に該当する可能性が高い」と指摘。両社に対し「関係法令に基づいてしかるべき対応を取りたい」と強調した。総務省は両社に詳細な報告を求めた上で、行政指導を検討する。
しかし、こうした事態は今回に限ったことではない。昨年7月に起きたKDDIの通信障害では、延べ3000万人以上が60時間以上にわたって通話やデータ通信を利用しづらくなる状態に陥り、過去最大規模の障害となった。その後もNTT西やNTTドコモ、楽天モバイルなどで大規模障害が生じている。
総務省はKDDIなどに行政指導を行ってきたが、これだけでは十分ではない。このため総務省は通信大手に対し、通信設備の保守運用やリスク管理態勢などを定期的にチェックする外部監査を行う方針だ。通信障害の防止につなげる必要がある。
また自然災害や通信障害時に他社の携帯電話回線を利用するローミングに関しては、119番など緊急通報の発信のみが可能なローミングを「できる限り早期に導入する」との方針を示している。通信障害は人命に関わるケースもあるため、一日も早い導入を求めたい。
通信サービスは現代社会に欠かすことができないインフラである。それだけに大規模障害が発生すれば、影響は大きい。KDDIの通信障害の際には、携帯電話の通話やデータ通信サービスにとどまらず、影響が自動車や運輸、物流、金融、電力など広く産業界に波及、生活インフラの混乱が長時間に及ぶ事態となった。
現在は、あらゆる機器をネットワークでつなぎ、情報をやりとりするIoT(モノのインターネット)技術が、自動車や家電から小売りまで社会のさまざまな分野に浸透している。今後は、大量のデータ処理が必要な自動運転の普及が本格化し、車両と通信の連携がさらに進む見通しだ。
こうした点からも、大規模障害の防止は大きな課題だと言えよう。自動運転を巡っては、万一障害が生じた場合の安全対策も重要だ。
安全網の充実も不可欠
携帯大手は通信障害の発生に備え、公衆無線LANの無料開放や、1台のスマートフォンで複数の回線を使えるサービスなど、通信手段確保の仕組みづくりを進めている。通信障害の防止策強化と共にセーフティーネットの充実も欠かせない。