【社説】グローバルサウス 安定と発展につながる支援を

29日、ワシントンで第2回民主主義サミットに臨み、演説するバイデン米大統領(左)(AFP時事)

岸田文雄首相は、米国などが主催する「民主主義サミット」にオンラインで参加し、アジアとアフリカ諸国に対して司法制度や選挙制度の構築などを支援していく考えを示した。中国やロシアなどの脅威が高まる中、第三極の「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国への関与を強める必要がある。

対露制裁に加わらず

首相はウクライナ侵略を続けるロシアと軍事的威圧を強める中国を念頭に、法の支配について「国際社会が守るべき最低限の基本原則」と強調。その基盤強化のため、アジアを中心に今後3年間で1500人以上の裁判官や行政官らを育成する方針を示した。

民主主義サミットでは、米政府が日本や英国、台湾、ウクライナなど70を超えるサミット参加国・地域による「民主主義サミット宣言」を発表。ロシア軍の即時撤退を求めた。

ウクライナ危機以降、米国を中心とする自由民主主義陣営と中露を中心とした強権主義国家との対立が激化している。しかし、グローバルサウスは双方から距離を置いている。これらの国々は自由主義陣営が科している対露経済制裁に加わっていない。だからといってロシアを支持しているわけでもない。

3月の中露首脳会談では「多極化」という言葉が頻出した。米国中心の民主主義に基づく秩序ではなく、グローバルサウスを含む新たな秩序を構築する思惑があるとみていい。

世界銀行は、中国が過剰債務を抱える途上国・新興国22カ国に対し、過去20年間に計2400億㌦(約32兆円)相当の緊急融資を行ったとする調査報告書を発表した。経済圏構想「一帯一路」の参加国が中心だ。

一帯一路では、中国が支援対象国のインフラを軍事などに利用する目的で借金漬けにして影響力を高める「債務のわな」が問題となっている。報告書によれば、中国の海外融資全体に占める過剰債務国の割合は2010年に5%弱だったが、22年には60%まで上昇した。

中国は一帯一路参加国による債務減免要求には応じないが、短期融資で足元の資金繰りを支援している。グローバルな貸し手として世銀や国際通貨基金(IMF)に迫る勢いで、存在感を高めている。支援でグローバルサウスへの関与を強める狙いもあろう。

岸田首相は3月に行われたインドのモディ首相との首脳会談で、グローバルサウスへの支援強化を表明。開発金融や食料安全保障など主に途上国が直面する課題での連携強化でも一致した。中国のように相手国への支配を強める支援ではなく、グローバルサウスの安定と発展につなげることが求められる。

安倍氏の構想実現を

故安倍晋三元首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」は、インド洋と太平洋に面したアジアとアフリカを結ぶ地域の経済成長と安定を目指す構想だ。安倍氏は、この地域について「力や威圧と無縁で、自由と法の支配、市場経済を重んじる場として育てる」と述べた。

岸田首相は欧米と連携し、安倍氏の遺した構想の実現に努めてほしい。

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