【社説】こども家庭庁 伝統的な家族の良さ見直せ

記者会見する小倉将信こども政策担当相=31日午後、東京・永田町

子供政策の司令塔「こども家庭庁」がきょう発足する。少子化や虐待、いじめなど複数省庁にまたがっていた重要課題に一元的に取り組む新組織の門出に期待が集まるが、これまでの現金給付のような対症療法的な発想では成果は望めまい。

少子化対策が最優先課題

子供は国の将来を担う「宝」である。厚生労働省と内閣府の子供関連部局が母体となり、首相直属機関との位置付けでスタートするこども家庭庁には、長期的な視野で子供の健全な成長に資する環境整備に積極的に取り組んでほしい。その基本となる考え方は、子供を個人として尊重するとともに、養育に第一義的な責任を持つ家族・家庭に対する支援と一体で進めることである。

新組織の名称は当初、「こども庁」が想定されていた。虐待被害児をはじめ「家庭」と聞くと傷つく子供がいるという意見や、戦前の「家父長制度」のイメージから、家庭は個人を抑圧するものと捉える政治家やマスコミからの圧力があったからだ。そうしたリベラル左派陣営の声を排して、こども家庭庁として出発することは評価できる。

職員は430人体制で、他省庁との調整役だけでなく、担当相は他省庁への「勧告権」という強い権限を持つ。最優先に取り組むべき課題に、政府が「静かな有事」とする少子化対策がある。保育所の増設をはじめ働く女性の待遇改善に重点を置いてきた従来の対策に効果がなかったことは、昨年の合計特殊出生率が1・30を割り込むのは確実なことでも明らかだ。

保育園に長く預けられ、家庭の温かさを十分知らないまま成長したのでは、結婚・出産願望は生まれない。子育てと仕事を両立させるための保育サービス拡充から一歩踏み出し、保育園に預ける時間を短くし、親が自宅での子育てに十分時間を取れるような施策に取り組むことも必要だろう。

重要課題に虐待対策もある。こちらも年々悪化を辿(たど)り、令和3年度の児童相談所による相談対応件数は20万件を超えている。虐待は核家族化、貧困、社会からの孤立、離婚など複数の要因が重なって起きるといわれるが、対応の基本は家庭における子育て支援であり、そこに携わる人材育成が必須だ。それに加え長期的な観点から、伝統的な家庭の良さを見直して、望ましい家族の在り方を提言することも躊躇(ちゅうちょ)すべきでない。

新組織の基本理念を定めた「こども基本法」には「日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり」とある。しかし現行憲法は、24条で婚姻との関連で家族の文言が出てくるのみだ。「家族観の押し付け」「私生活への介入」との反発への懸念から、これまでの子育て支援が対症療法に終始し、抜本的な対応ができなかった要因はここにある。

憲法に「家族条項」を

世界人権宣言には「家庭は、社会の自然かつ基礎的な集団単位であって、社会及び国の保護を受ける権利を有する」とある。こども家庭庁の設置目標の達成には、憲法に「家族条項」を入れることも必要になってくるだろう。

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