【社説】温暖化報告書 日本は気温上昇抑制に貢献を

国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が、最新の科学的知見をまとめた第6次統合報告書で、19世紀後半からの気温上昇を1・5度または2度に抑えるために「この10年間に急速かつ大幅な、即時の温室効果ガス排出量削減」を要請した。

日本は原発の積極的な活用で自国の排出量削減に努めるとともに、全世界の気温上昇抑制に貢献すべきだ。

 「パリ協定」不十分と指摘

報告書は、19世紀後半を基準とした世界の平均気温の上昇は2011~20年に既に1・1度に達していると警告。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づき各国が21年10月までに発表した削減計画のままでは不十分で、このままでは今世紀中に1・5度を超える可能性が高くなると指摘した。

上昇を2度に抑えるには二酸化炭素(CO2)排出量の実質ゼロを70年代初頭に、1・5度の場合は50年代前半に達成する必要があると強調。今後10年間の「急速かつ大幅」な削減を求めている。

気候変動は世界中で海水面の上昇など極端な変化をもたらしており、世界の約33億~36億人が非常に脆弱(ぜいじゃく)な状態で生活しているとした。日本でも異常気象が頻発し、毎年のように大きな被害を出している。対策強化は待ったなしだ。

まずは日本が、発電時に温室ガスを排出しない原発を積極的に活用して排出量削減を急がなければならない。東京電力福島第1原発事故後に厳格化された新規制基準の下で再稼働した原発は10基にとどまる。

岸田政権は先月、「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」を決定。原子力を脱炭素効果の高い電源として「最大限活用」する方針を明記し、原発の建て替えや運転期間延長を盛り込んだ。建て替えや新増設を急ぐとともに、既存原発を十分に活用する必要がある。

ただ、温暖化対策は全世界の課題である。ロシアのウクライナ侵略に伴うエネルギー価格の高騰で、各国では温室ガスを多く排出する石炭など化石燃料への回帰が広がっている。ロシア軍の撤退を実現することは、平和を回復するとともに温暖化対策の強化にもつながると言えよう。日本は欧米諸国などと協力し、ロシアへの圧力を強めなければならない。

一方、このことはエネルギー安全保障における石炭火力の重要性を示したとも捉えることができる。石炭火力は廃止に向けた流れが加速していたが、昨年の先進7カ国首脳会議(G7サミット)の首脳声明では、ウクライナ情勢を受けて廃止期限を明記しなかった。

 高効率石炭火力の輸出を

政府は21年10月に決定したエネルギー基本計画に、30年時点で電源構成の約2割を石炭火力で賄う方針を盛り込んだ。

日本は温室ガスの排出量を減らす高効率な石炭火力発電施設を開発している。技術大国の日本は他国の排出量削減への貢献も求められる。一層の削減を可能とする技術開発を急ぎ、途上国などへの輸出支援を進めるべきだ。

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