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【社説】文化庁京都に 省庁移転もっと大胆に進めよ

文化庁の京都庁舎が業務を開始し、オンラインで岸田文雄首相の訓示を聞く都倉俊一長官(左手前)ら 27日午前、京都市上京区

文化庁が京都市に移転し、業務を開始した。中央省庁がほぼ全面的に地方に移転するのは初めてだ。

東京一極集中の是正が第一の目的だが、その必要性はより高まっている。政府は省庁移転計画を再立案し、もっと大胆に進めるべきだ。

 東京一極集中の是正図る

岸田文雄首相は新庁舎の除幕式後、東京からのテレビ電話で「都倉(俊一)長官のリーダーシップの下、ポテンシャルの高い日本の地域や文化芸術の底力をいま一度掘り起こしていただき、ぜひ新しいパワーを生み出していただきたい」と訓示した。

京都は日本文化のルーツであり、関西は東京と並ぶ現代文化の中心だ。文化行政の中心が日本文化の故郷に里帰りすることによって、西欧のルネサンス(文芸復興)のように、伝統の再発見による力を得て新たな創造につながることを期待したい。

世界の人々が観光に訪れたい都市のトップに挙げられる京都は、その発信地としてふさわしい。都倉長官は「祝賀の集い」で「古来からの文化財の維持・継承と、世界への新たな文化の発信が新文化庁の大きな役目」と述べている。

中央省庁の地方移転は、安倍晋三政権が掲げる「地方創生」の目玉の一つとして2014年に打ち出された。政府は検討を進め、移転を希望する地方自治体を募集した。しかし20年に消費者庁が消費者行政の企画立案をする「新未来創造戦略本部」を徳島市に開設し、総務省が18年に統計局の一部を和歌山市に移転させただけで、全面移転したのは文化庁のみである。

鳴り物入りで始まった省庁移転が進まない理由は、国会対応のため、東京でなければ業務に支障が出るという官僚たちの反対だった。しかし、国会対応はその業務の一部であり、また省庁によっては、東京でなくとも業務全体から見て問題のないところもあるはずだ。

地方に移転した場合、東京との頻繁なテレビ会議などが必要になってくる。現在は、新型コロナウイルス蔓延(まんえん)によるリモートワークの広がり、日常化によって、情報通信環境は整えられている。情報セキュリティー対策をしっかり行えば問題はないはずだ。

新型コロナ蔓延で東京一極集中から脱却の兆候も見られたが、コロナが落ち着くに従って人口集中の勢いが再び盛り返さないとも限らない。少子化対策を政権の最重要課題と位置付ける岸田首相は、東京一極集中是正を目指す「デジタル田園都市国家構想」で、東京から地方へ年間1万人の移住を実現すると発表した。本当に実現させる決意があるのであれば、企業や人々の地方移転の呼び水となる中央省庁の本格移転を再度検討し着手すべきだ。「まず隗より始めよ」である。

 災害対策としても重要

東京一極集中からの脱却は、地方消滅や人口減少の危機を克服する重要な鍵であるばかりでなく、首都圏が巨大地震に見舞われた場合の危機管理対策として切実さを増している。首都機能の分散・移転も含めて大胆な総合的方針を政府は早急に検討すべきである。

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