-26日午前、東京都港区-1.jpg)
自民党が定期党大会を開いた。4月の統一地方選と衆院補欠選挙への事実上の総決起集会である。岸田文雄首相(党総裁)は「一丸となり、まなじりを決して必ず勝ち抜こう」と述べ、党の団結を訴えた。
故安倍晋三元首相の志の継承であり、党是でもある憲法改正には、覚悟を持ち結束して取り組むべきである。一方で、党内にはリベラル政策の浸透を懸念する声が強い。結党時の原点を再確認し、保守岩盤層を離反させることなく固め直すことが肝要である。
浸透するリベラル政策
岸田首相は「安倍元総理、菅前総理が築いてきた『前進の10年』の成果の礎の上に、『次の10年』を創るため、新たな一歩を踏み出し、さらなる挑戦を続けよう」と強調した。責任政党として「愚直に一つ一つ答えを見出(いだ)すことで、国民の負託に応えていく」という謙虚な姿勢で臨むことは当然である。
そのためには与野党の冷静かつ建設的な議論が望まれる。憲法改正について首相は「野党の力も借りながら、国会での議論を積極的に行う」と語った。とはいえ、国家の根幹を成す憲法の改正は、もはや待ったなしの段階にある。緊急事態条項の新設を巡る議論は、昨年の臨時国会での衆院憲法審査会で論点整理が進められた。9条の審議も急がねばならない。
ところが立憲民主党の要求により、今国会初の衆院憲法審の開催が3月2日にずれ込んだ。同性婚に関する議論も同審査会で行うよう求めている同党の言いなりになるような弱腰ではいけない。
「時代は憲法の早期改正を求めている」と首相が感じているのであれば、早急に審議すべきテーマに絞って審議を深めるよう指導力を発揮すべきである。国会任せでは駄目だ。
保守層が懸念しているのが、リベラル政策の党内への浸透だ。選択的夫婦別姓や同性婚を認めたり、LGBT理解増進法案の成立に向けて積極的に動いたりすれば、党の支持層が広がり岸田政権の支持率もアップするのではないかとの勘違いもあるようだ。
しかし、それは誤解である。保守支持層が溶解し、党基盤を逆に弱めることにつながる。令和5年の運動方針には盛り込まれなかったが、5月の広島サミット前の同法案成立を図る動きもある。拙速は禁物だ。
政権運営の課題の一つは、官邸と党との連携不足を解消することがある。首相は「自民党の良き伝統」として「議論を尽くし、知恵を持ち寄り、いったん決めたなら、一致団結して成し遂げる」ことを挙げた。
しかし、児童手当の拡充について茂木敏充幹事長が「所得制限の撤廃」を代表質問で提案。「首相とは事前に相談していた」としたのに対し、首相は「一つの意見だ」と述べるにとどめた。これまでの自民党の政策とは大きく異なるだけに議論を尽くすべきだろう。
自ら良き伝統実行を
「次の10年」を創るため首相に必要なのはこの「良き伝統」を自ら実行することであり、保守の「自民党らしさ」を失わないことである。