トップオピニオン社説【社説】G7テレビ会議 民主陣営は対露包囲網強化を

【社説】G7テレビ会議 民主陣営は対露包囲網強化を

岸田総理はビデオ会議で G7とウクライナの首脳のテレビ会議に出席。写真提供:日本の首相プレスオフィス UPI

先進7カ国(G7)首脳が、ロシアのウクライナ侵略1年を受けてテレビ会議を行った。G7をはじめとする民主主義陣営は対露包囲網を強化すべきだ。

ウクライナ大統領も出席

日本は今年のG7議長国で、岸田文雄首相が議長を務めたのは今回の会議が初めてとなる。首相は「厳しい対露制裁と強力なウクライナ支援を通じ、法の支配に基づく国際秩序を堅持するG7の確固たる決意を示す」と表明。会議にはウクライナのゼレンスキー大統領も出席し、首相はゼレンスキー氏の「平和実現に向けた真摯(しんし)な努力」を支持した。

首脳声明は「ウクライナ領土全体からの即時、完全、無条件の撤退をロシアに要求する」と強調した。撤退を実現させるには、ウクライナへの武器支援強化が欠かせない。声明では、防空システムや弾薬、戦車などのニーズを満たすため引き続き調整するとした。

武器支援を巡っては、戦車などを供与する米欧に対し、日本は防衛装備移転三原則で武器供与に制約があるため、防弾チョッキやヘルメットの提供にとどまっている。政府は昨年の国家安全保障戦略改定で「防衛装備移転三原則や運用指針をはじめとする制度の見直しを検討する」ことを打ち出した。

具体的には、殺傷能力を持つ装備品の移転先をオーストラリアなど友好的な同志国のほか、ウクライナのような国際法違反の侵略を受けている国にも広げる方向だ。しかし、2023年度中に新たな指針の運用開始を目指すというのは遅くないか。早期開始の実現に向け、首相は指導力を発揮してほしい。

声明は核・原子力に関して、ロシアのプーチン大統領が新戦略兵器削減条約(新START)の履行停止を発表したことに「深い遺憾」を表明。核兵器や生物、化学兵器の使用は「厳しい結果につながる」とした。

このように警告したことは正しいが、首相の唱える「核なき世界」の追求ではロシアの「核の脅し」を抑えることはできない。首相は会議に先立ち、記者会見で「きょうのウクライナはあすの東アジアかもしれない」と強い危機感を表明した。日本は議長国としてG7の結束を主導する意味でも、米国の核兵器を共同運用する「核共有」を検討する必要がある。

声明は、中国を念頭に第三国がロシアへの支援を停止しなければ「深刻なコスト」を伴うと警告。第三国が制裁を迂回(うかい)してロシアを支援するのを防ぐために「実施調整メカニズム」を設立するとしている。米国は中国がロシアへの武器供与を検討しているとみており、これを牽制(けんせい)する狙いだろう。

めど立たない首相訪問

バイデン米大統領が今月、ウクライナを訪問したことで、ロシアの侵略開始後にG7首脳の中で訪問を果たしていないのは首相一人となった。首相は意欲的とされるが、安全確保などの面で課題が多く、実現のめどは立っていない。法的根拠がないため、自衛隊が首相の安全を守れないのは大きな問題だ。憲法改正で自衛隊を軍と位置付けなければ、日本が国際社会で国力に応じた役割を果たせない。

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