政府は日本学術会議法改正案を今国会に提出する。会員候補の選考を巡って、第三者でつくる「選考諮問委員会(仮称)」を新設し、候補を事前に諮問させることが柱だ。人選を透明化し、幅広い分野の会員で学術会議を構成させる狙いがある。
学術会議は日本共産党との関わりの深さが指摘されている。特定の団体の影響力を排除し、国の機関として公正中立な立場で役割を果たす必要がある。
会員以外からも候補推薦
法改正では、学術会議の会員が次期会員候補を推薦する現行の仕組みを改め、会員以外からも候補を推薦できるようにする。学術会議は、諮問委の意見を「尊重しなければならない」ともしている。
学術会議は「わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させる」(日本学術会議法2条)ため、1949年に発足した。内閣府の特別の機関の一つであり、年約10億円の予算が投じられている。首相が任命する会員は特別職の国家公務員(非常勤)という立場である以上、人選の透明化を進めることは理解できる。
現行の人選の仕組みは、学術会議の発足当初から密接な関係を持つ共産党にとって都合がいいものとなっている。共産党系の会員は、後輩の共産党系の学者を推すからだ。
学術会議は2020年、当時の菅義偉首相が新会員として推薦された6人を任命しなかったことで注目を集めた。6人はいずれも人文社会科学の研究者で、安全保障関連法などに反対していた。これも背後には共産党の影響があるとみていい。こうした状況を改善するには法改正が欠かせない。
特に近年、学術会議は軍事研究忌避の姿勢が問題視されてきた。学術会議は1950年に「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」、67年には「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を出している。2017年にはこの二つの声明を継承するとした新たな声明を決定。この中で、防衛省が将来の装備品開発を目指して研究者に資金提供する「安全保障技術研究推進制度」について「政府による介入が著しく、問題が多い」と指摘している。
ただ科学技術が急速な進歩を遂げる中、軍事と民生の区別をつけるのは難しくなっている。このため学術会議は昨年、軍民双方で活用できる「デュアルユース(両用)」の研究を事実上容認する見解をまとめた。
日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、こうした研究は日本の安全を守る上で極めて重要だ。しかし学術会議は1950年の声明は否定しないとしており、不十分な対応だと言わざるを得ない。
軍事研究認め国に貢献を
法改正について、学術会議側は「選考が第三者の監視を受ければ独立性を失う」などと反対する意見が強い。
だが軍事研究に否定的な姿勢は、学術会議が強調する「学問の自由」を侵害することにもなりかねない。軍事研究をきちんと認め、国家の安全に貢献すべきだ。