日本共産党は、同党への党首公選制度の導入を提唱した党員について「重大な規律違反に当たる」として除名処分にした。「民主集中制」で上意下達の独裁的な党組織を死守していくことを改めて世に示しており、共産党そのものは民主主義と相容(い)れない政党であることが確認できる顛末(てんまつ)となった。
機関紙で「党首公選」論難
共産党元安保外交部長で党本部勤務経験のある現役党員の松竹伸幸氏が1月、出版を通して党トップを党員投票で選ぶ「党首公選」導入を求め、同党において異例の動きとして注目されていた。志位和夫委員長が2000年に就任してから20年以上も続く違和感や、党首を選挙で選んだらよいという一般的な考えを述べたにすぎない。
これに対し、共産党は「党の意思決定は、民主的な議論をつくし、最終的には多数決で決める」「決定されたことは、みんなでその実行にあたる」「党内に派閥・分派はつくらない」など党規約で規定される民主集中制の組織原則に「『党首公選制』という主張は、規約のこの原則と相いれない」などと機関紙上で論難した。
一刀両断に松竹氏は処分されたが、共産党では繰り返されてきたケースであり、驚くに値しない。日本は民主主義社会だが、共産主義者の集まりである共産党内では中国や旧ソ連の共産党組織と似てトップが絶対化され、長期間在職し、党員に対して党中央は無謬(むびゅう)とされる傾向にある。問題は、このような共産党が「民主主義」を叫びながら国政および地方議会で一定の勢力を伸ばしたことであろう。
共産党の組織原則は民主主義の上に成り立ったものとは言えない。100年の歴史を持つ共産党は、ロシア革命を手本に活動した革命政党だ。暴力革命で国家転覆を謀るからには国家権力の取り締まりを受ける。このため党員同士が鉄の規律で団結して非合法、合法の活動を行ってきた。
終戦後、共産党は暴力革命路線を取って武力闘争の非合法活動を全国各地で行い、破壊活動防止法制定につながった。その後は合法活動の選挙と議会活動が残ったが、閉鎖的な組織原則は党規約に反映され、党内で「スパイ」「分派」を取り締まる査問、除名、党幹部の突然の代々木病院入院など幾度となく起きた事例がある。
政府は共産党について「暴力主義的破壊活動を行った疑いがあり、また、同党のいわゆる『敵の出方論』に立った暴力革命の方針に変更はないものと認識」している。このような党の組織原則に、松竹氏が処分について「国民としての党員にも認められた憲法の言論表現の自由に属する問題」を訴えても通用しないとみるべきだろう。
非共産の野党共闘を
共産党との選挙協力など野党共闘に参画する各党や、共産党を加えた野党共闘勢力を自民党・公明党の連立に対する政権交代勢力として期待するリベラルなマスコミは、もう一度、反自民非共産の枠組みを原則とする政治勢力の形成を考えるべきである。
さもなくば政権選択は空疎な響きにすぎない。