トップオピニオン社説【社説】米一般教書演説 「内向き」で影響力低下招くな

【社説】米一般教書演説 「内向き」で影響力低下招くな

バイデン米大統領は連邦議会の上下両院合同会議で、内政・外交方針を示す一般教書演説に臨んだ。連邦政府の借入限度額を定めた「債務上限」の引き上げを巡り、野党共和党に協力を要求したほか、外交面でも中国との競争に打ち勝つため「結束すべきだ」と強調。超党派での連携を訴えた。

ただ2024年の大統領選に向けて与野党の対決色は強まっており、バイデン氏の政権運営は一段と厳しさを増している。

中間選挙で「ねじれ」に

昨年11月の中間選挙で共和党が下院多数派を奪取し、上下両院で支配政党が異なる「ねじれ議会」となって以降、バイデン氏の一般教書演説は初めて。債務上限問題では、引き上げがなければ6月にも米国がデフォルト(債務不履行)に陥り、世界経済の混乱を招く恐れがある。バイデン氏は、与党民主党が過去に共和党に協力した経緯を引き合いに歩み寄りを促した。

対中政策に関しては、経済安全保障の観点で重要性が高まる半導体などのハイテク分野で、対抗する姿勢を鮮明にした。また米領空を飛行していた中国の偵察気球の撃墜をためらったと共和党が批判を強めていることを念頭に、主権侵害には断固とした措置で対応すると強調。対中強硬姿勢を強める議会への配慮をにじませた。

しかし共和党は、バイデン氏の息子であるハンター氏のウクライナや中国でのビジネスを巡る利益相反や、拙速な21年夏のアフガニスタン撤退などについて、バイデン氏弾劾の準備を進めている。与野党の対立は一層激化するとみていい。

気掛かりなのは、バイデン氏が演説でロシアによるウクライナ侵略に触れる中で「必要な限りウクライナを支え続ける」と改めて表明したものの、共和党内に支援縮小を求める声があることも踏まえ、追加支援などは打ち出さなかったことだ。

ねじれ議会となったことで、米国が「内向き」になるとの懸念は出ていた。だがロシア軍は侵攻1年の2月下旬に合わせ、大規模攻勢に出るとの見方が強い。ウクライナは民主主義国と専制主義国との戦いの最前線であり、ロシアの力による一方的な現状変更を許さないためには、米国の支援が不可欠だ。支援縮小の動きが強まれば、ロシアを利するだけだろう。国際社会における米国の影響力低下を招いてはなるまい。

バイデン氏の任期は残り2年を切り、来年11月には大統領選が予定されている。年内の早い時期に再選出馬を表明するとみられているバイデン氏は、演説の多くを内政に割き、約半世紀ぶりの低水準となった失業率など実績を列挙。移民制度や警察の改革についても実現を誓うなどアピールに努めた。

 険しい再選への道のり

ただ機密文書持ち出し問題などの影響もあり、米政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の集計によると、バイデン氏の先月19日現在の支持率は42・8%で、不支持率を約10ポイント下回るなど不人気が続いている。

後半の任期で成果を示せなければ、求心力の低下は必至であり、再選への道のりは極めて険しいと言わざるを得ない。

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