【社説】衆院「1票の格差」 機械的な是正で混乱招くな

「1票の格差」が最大2・08倍だった2021年10月の衆院選は投票価値の平等に反し違憲だとして、二つの弁護士グループが選挙無効を求めた16件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷が合憲との判断を示した。判断は妥当だが、都市部への人口集中が続けば格差が拡大し、これを是正すれば地方の声が届きにくくなろう。憲法改正による抜本的解決が求められる。

2倍を超えても合憲判決

今回の判決では、人口比を重視した定数配分「アダムズ方式」を導入するとした16年改正の新たな選挙区割り制度について、合理性があると判断。「格差拡大の程度が制度の合理性を失わせるほど著しいものでない限り、投票価値の平等の要求に反する状態とは言えない」とした。適切な判断である。

最高裁は11年の判決で、都道府県に1議席を割り振った上で定数配分する「1人別枠方式」が格差を生むと批判。格差が2・13~2・43倍だった09、12、14年の衆院選を違憲状態とした。国会は1人別枠方式を廃止し、アダムズ方式を導入。17年衆院選は格差が2倍を切り、最高裁で合憲判決が出た。

21年衆院選では2倍を超えたが、格差が安定的に是正される制度を導入した点を評価した。昨年12月には、衆院小選挙区を「10増10減」する改正公職選挙法が施行され、格差は現行の最大2・096倍から1・999倍に縮小した。

今回の判決で「投票価値の平等は選挙制度を決定する絶対の基準ではなく、国会に広範な裁量が認められている」との考えを示したことも正しい。1票の格差を是正するため、国勢調査のたびに選挙区割りが変更されれば、有権者の混乱を招く恐れもある。この意味で、機械的な格差是正が優れた選挙制度の在り方につながるとは言えない。

とはいえ、投票価値の平等も憲法で定められたものであり、ないがしろにすることはできない。国会に格差是正に向けた不断の取り組みが求められるのは当然である。

問題は、都市部への人口集中が続けば格差拡大は避けられず、これを是正すれば都市部の選挙区の定数が増える一方、地方は減少することだ。これでは、地方の意見が国政に反映されにくくなりかねない。

憲法43条は、衆参両院について「全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」としている。国会議員に地域代表としての性格は求めていないわけだが、1票の格差是正を推し進めた結果、参院では隣接県で選挙区を統合する「合区」も導入した。これが本当に適切なのか。

改憲で衆参の役割明確に

合区に関しては、議員の地盤ではない県の有権者から「議員の存在が遠くなった」と不満の声も出ている。自民党が18年にまとめた改憲4項目には「合区解消」が含まれる。

米国の上院議員は州の代表であり、人口にかかわらず各州から2人ずつ選出されるため、1票の格差は問題にならない。日本でも単に合区をなくすだけでなく、衆参両院の役割分担を明確化し、その役割に応じた選挙制度の在り方を定めた改憲を実現してほしい。

spot_img
Google Translate »