トップオピニオン社説【社説】独戦車供与 日本も武器支援を進めよ

【社説】独戦車供与 日本も武器支援を進めよ

ドイツ政府は、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対し、自国の主力戦車「レオパルト2」を14両供与すると発表した。また、ポーランドやフィンランドなどが保有しているレオパルト2をウクライナに提供することも承認した。さらに、ウクライナ兵に対する同戦車の訓練を速やかに実施するほか、維持管理や弾薬も負担するとしている。

ウクライナ大統領が歓迎

雪解けが進む春以降、ロシアがウクライナに対し攻勢に出る可能性がある。ウクライナのゼレンスキー大統領はそれに備えるとともに、大規模な反撃に出て奪われた領土の奪還を実現しようと考えている。そのため、切り札となるのがドイツ製戦車である。春先の戦闘激化に間に合わせるため、ゼレンスキー氏は一刻も早いレオパルト2の供与をドイツに求めてきた。

これに対しドイツのショルツ首相は、戦車の提供に慎重な姿勢を取り続けてきた。第2次世界大戦への反省から外国に対する軍事関与に消極的な国内世論への配慮や、ウクライナ支援でドイツが他国よりも先行し、ロシアを刺激したくないとの政治的判断が働いていたためだ。

そのためショルツ氏は、ドイツは可能な限りウクライナを支援するが、北大西洋条約機構(NATO)とドイツが戦争の当事国となることは回避する、また支援は同盟国との連携が条件で、ドイツ単独では決定しないとの方針を堅持し、米国の関与を求めてきた。

そうした中、英国が「チャレンジャー2」戦車の供与を決めた。また各国からドイツにウクライナへの戦車提供を求める声が高まり、さらにバイデン米政権が米国の「エイブラムス」戦車を供与する方針を固めたことで、ドイツ政府も方針転換に踏み切った。ゼレンスキー氏は「勝利に向けた重要な一歩」と米独の決定を歓迎している。

これで西側諸国の反露の結束は維持され、懸念された足並みの乱れは解消に向かおう。地上戦の主力である戦車を提供することで、ウクライナへの武器支援はより高い段階に入ったと言える。ドイツはじめ各国から100台近いレオパルト2が供与されるため、今後の戦局に大きな影響を及ぼす可能性がある。一方、今回の決定に強く反発するロシアは核兵器使用の威嚇で対抗する恐れがあるが、そのような脅しに屈してはならない。

5月に広島で開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも、ウクライナ支援は大きなテーマになるとみられる。議長国である日本の支援の在り方も問われよう。昨年わが国は、防弾チョッキやヘルメットを供与したが、ウクライナが求めている武器支援には応じていない。

問われる政権の“本気度”

日本は西側諸国の対露結束を促すとともに、積極的平和主義の立場から自らも国際紛争の解決と平和の実現に重要な役割を担うべきである。ドイツの方針転換も踏まえ、一歩進んだウクライナ支援が必要ではないか。

岸田政権は安保関連3文書を改定し、防衛装備移転三原則やその運用指針などの制度を見直す方針を示した。ウクライナ支援に対する岸田政権の“本気度”が、いま問われている。

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