トップオピニオン社説【社説】少子化対策 非婚・晩婚に異次元施策を

【社説】少子化対策 非婚・晩婚に異次元施策を

岸田文雄首相は施政方針演説で少子化対策を最重要課題に掲げ、「出生率を反転させなければならない」と決意を表明した。

その決意は評価できるが、そのために策定する「異次元の少子化対策」の「次元」が問われてくる。

年間結婚件数の減少続く

首相は、急速に進展する少子化で昨年の出生数は80万人を割り込むことが見込まれ、「わが国は、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれている」と危機感を表明。「子供・子育て政策への対応は待ったなし」と述べた。

その厳しい認識は当然だ。しかし、そのために「子供ファーストの経済社会」をつくり上げると述べたが、「子供ファースト」の意味が今一つはっきりせず、これが出生率を反転させる有効な方策とは思われない。

首相は6月までに予算倍増に向けた大枠を示す考えを表明。こども政策担当大臣に指示した「三つの基本的方向性」に沿って具体策の検討を進めると言うが、その柱は児童手当を中心にした経済支援の拡充である。これでは従来政策の経済規模を大きくしただけで「ばらまき」に終わりかねない。

本当に少子化問題を解決しようとするのであれば、これまでさまざまに取り組んだにもかかわらず効果を挙げることのできなかった少子化対策を根本的に洗い直し、言葉の本来の意味での「次元」の異なる施策を打ち出すべきである。

少子化の最大の原因は、非婚化と晩婚化にある。この問題を解決する施策こそ必要とされている。

1年間の結婚件数は、2019年の「令和婚」での一時的増加以来、減少している。国立社会保障・人口問題研究所の出生動向調査では、21年の時点で「一生結婚するつもりがない」と回答した未婚者が18歳から34歳の世代で男女とも増加している。

結婚を望まない理由について、内閣府の委託を受けた調査では①必ずしも結婚という形式にこだわる必要性を感じない②仕事・育児・介護を背負いたくない――などの理由が女性に多い。男性では経済的な理由で結婚を諦める人が少なくない。

結婚して子育てに入る人々への支援も必要だが、それ以前にまず、結婚願望を持つ若い人たちが結婚できるようにすべきだ。そのために経済的な安定をいかに後押しするかだ。児童手当の拡充だけでは、下手をすれば、家庭を持てる人と持てない人による社会の二極化といういびつな結果を招きかねない。

価値観の多様化を背景に結婚や家庭を営むことの価値が揺らいでいることも、出生率低下の大きな原因となっている。異次元の少子化対策を言うのであれば、価値観の問題にまで踏み込まなければ解決しない。

地方移住の流れ強めたい

個人の生き方に関わる問題だけに、政府が「生めよ増やせよ」と旗を振ることは難しいだろう。しかし、若い世代に起きている地方移住の流れをより大きくし、社会構造を大胆に改革すれば、個人主義的な都会的ライフスタイルからの脱却も可能だ。知恵を絞って、これまでの次元を超えた対策を策定すべきだ。

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