【社説】首相年頭会見 「安倍政治継承」念頭に挑戦を

岸田文雄首相は首相の新年の恒例行事となっている伊勢神宮参拝の後、年頭の記者会見で「新たな挑戦をする1年にしたい」と語った。

内閣支持率の低迷が続く中、防衛力の強化、経済の好循環、少子化対策、欧米諸国訪問、G7広島サミットなど重要課題が山積している。憲法改正を軸に据えた「安倍政治の継承」を念頭に置きつつ、丁寧に、かつ説得力を持って諸課題に挑戦してもらいたい。

改憲と拉致に触れず

首相が会見で特に強調したのは、日本経済の長年の課題に終止符を打ち、新しい好循環の基盤を起動することと、異次元の少子化対策に挑戦するという二つの課題だった。確かにこれらは「先送りのできない」待ったなしの厳しい状況に直面している。ただ、首相は「挑戦」という言葉を12回も使ったが実効性のある具体策を語っていない。

「賃金が毎年伸びる構造をつくる」と言うが、どうつくるのか。「賃上げによる人への投資こそが日本経済の未来を切り開くエンジンとなる」と言っても企業の判断が伴わなければ実現する話ではない。

昨年の出生数が80万人を割り込んだ少子化問題については「こどもファーストの経済社会をつくり上げる」とか「出生率を反転させる」ことに「本気で取り組む」との意気込みばかりが先立つ印象だ。子供対策の予算を倍増させると言うが、いつを基準にした倍増なのか。

首相は対策の基本的な方向性として、児童手当の支援強化、幼児教育などの強化や女性の働き方改革の推進という3点を挙げたが、これらは決して新しい試みではない。「異次元の少子化対策に挑戦する」と言うが、言葉が踊っていないか。

今年最大の外交課題の一つは13日に予定されているバイデン米大統領とのワシントンでの首脳会談である。反撃能力保有を盛り込んだ国家安全保障戦略など「安保3文書」の改定を土産に新たな日米同盟関係を確認することになろう。

ロシア、中国、北朝鮮による軍事的脅威が急速に増し、国民の命や暮らしを守るために防衛力を抜本的に強化することは緊急課題だ。しかし、これには防衛費増のための安定財源が求められている。首相は増税を検討すると表明し、12月に防衛増税の実施時期を決定する見通しだが、反対論は根強い。

忘れてならないのは、安倍晋三元首相が目指し岸田首相が継承すると明言した憲法改正の実現だ。年頭の記者会見で一言も触れられず、記者側からの質問もなかった。改憲と北朝鮮による拉致被害の解決に向けた取り組みと決意を常に語ることこそが、安倍政治の根幹のはずだ。

岸田政権の支持率下落はそれを怠っていることに起因している。安倍氏の築いた保守岩盤層が離れ始めているからだ。旧統一教会問題を巡る結論ありきの強引な手法も問題だが、これでは4月の統一地方選や衆院補欠選挙の勝利に黄信号が灯(とも)る。

覚悟と胆力を持て

通常国会は23日からスタートする。覚悟と胆力を持ち、上滑りにならない実効性のある政策の遂行を求めたい。

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