【社説】23年日本の課題 脅威取り除く積極戦略が必要

2023年、日本と世界は一層の困難に直面すると思われる。わが国の自由と安全を脅かす潜在的な脅威がより顕在化してくると予想される。

一方で、わが国が積極的な戦略を打ち立て対処すれば、国を守るとともに世界の課題解決への大きな力となるはずだ。

減少する民主主義国家

ロシアのウクライナ侵略、中国の台湾への軍事的威嚇が続き、北朝鮮は新年早々、弾道ミサイルを発射している。これら権威主義国家の力による現状変更の動きは続く。ミャンマーや香港などでは民主勢力が弾圧され、世界の民主主義国家・地域は減少している。

そのような動きに対し、安倍晋三元首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想は、自由主義国家の共通の積極戦略となった。確固とした信念と戦略があれば、世界を動かせることを安倍氏は証明したのだ。日本は権威主義国家から自由と民主主義を守る積極戦略を展開すべきである。そのためにも、脅威をはねのける力を持つ必要がある。

岸田文雄首相は年頭所感で、広島市で5月に開かれる先進7カ国首脳会議(G7サミット)などで「力による一方的な現状変更や核による脅しを断固として拒否する強い意思を示す」と強調した。被爆地の広島市での開催は反核アピールの絶好の機会だが、周辺国に核の使用を思いとどまらせるには人道に訴える以上に具体的な抑止力を高める必要がある。

日本が享受してきた戦後の繁栄を脅かすのは、軍事的な脅威ばかりではない。静かに、しかし確実に進行する人口減少と超少子高齢化は、経済力、地域社会、憲法が掲げる「健康で文化的な最低限度の生活」を危うくしつつある。

日本総研の推計によると、昨年1年間に生まれた子供の数を示す出生数が、およそ77万人となり、国の統計開始以降、初めて80万人を下回る見通しになった。実際に下回れば、国の予測よりも8年早く、少子化が想定を上回るペースで進んでいることになる。

少子化の予想以上の進行は、新型コロナウイルスの感染拡大によって結婚の件数が20年、21年と減少が続いていることと関係していると思われる。しかし、出生数の減少は1973年の第2次ベビーブーム以降続いている。その後、さまざまな対策が打ち出されてきたが、功を奏していない。

岸田首相は年頭所感で「先送りできない問題に正面から立ち向かい、一つ一つ答えを出していく」と述べている。少子化対策でも再検討を行い、全世代型社会保障改革にとどまらない、もっと根本的な解決を模索すべきである。

地方移住で出生率向上を

東京への一極集中は、国全体の出生率低下の原因になっている。そういう中、新型コロナウイルス禍によって子育て世代を含む若い人々の地方移住の動きが起きている。

政府は東京圏から地方への移住者を年間1万人にすることを目標に掲げたが、これが出生率の向上に繋(つな)がるようしっかりと後押しすべきだ。

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