Homeオピニオン社説【社説】22年の日本 保守の後退と民主主義の危機

【社説】22年の日本 保守の後退と民主主義の危機

ロシアのウクライナ侵攻に始まった2022年は、国内的にも多難な年として歴史に刻まれることになるだろう。

7月8日、奈良市で起きた安倍晋三元首相暗殺は、日本の保守政治を大きく後退させ、民主主義をかつてない危機にさらすことになった。

脅かされる信教の自由

選挙演説中の安倍氏に対するテロを民主主義への挑戦として、当初は山上徹也容疑者を厳しく非難する声が相次いだ。しかし世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への恨みが動機であったとの容疑者の供述が警察から流されると、マスメディアの関心は旧統一教会叩(たた)きに集中した。一方的な中世の「魔女狩り」を思わせる報道によって形成された世論を意識して、岸田文雄首相は自民党と教団との関係断絶を宣言した。

保守主義を柱としながらも多様な価値観を容(い)れることで、自民党はこれまでの幅広い支持基盤を維持してきた。旧統一教会との絶縁宣言は、日本政治をワイドショー政治に堕としめるものである。

首相の地位を退いてからも「日本を取り戻す」を目標に、国家の安寧と民族の誇り回復のために活発に行動してきた安倍氏がいなくなったことで、保守政治は大きな柱を失った。それを好機と、左翼勢力は安倍氏の国葬にさまざまな理由をつけ反対するなど「安倍レガシー」の否定に躍起となった。

旧統一教会と安倍氏や自民党の関係を誇大に言い立て、一部メディアは憲法改正が同教団の影響によるものなどと根拠もなく主張している。安倍氏の死を保守勢力の分断に利用するあざとさに唖然(あぜん)とさせられる。

参院選で自民、公明両党に日本維新の会、国民民主党を加えた改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2議席を維持したものの、旧統一教会問題で改憲への真剣な取り組みはどこかに行ってしまった。安倍氏亡き後、誰が日本を取り戻す主体となるのか、大きな課題である。

旧統一教会問題では「救済新法」が拙速に成立した。これらは結果として容疑者の狙い通りの展開であり、政府さらに立法府までがテロリストに協力したことになる。

国会でも信教の自由の重みに対する認識を欠いた発言が、平然と飛び交うようになっているのは憂慮すべき状況だ。政府は同教団への解散命令請求を視野に質問権を初めて行使したが、信教の自由をないがしろにすれば民主主義の基盤を揺るがす。日本を中国のような全体主義国家に転落させてはならない。

反撃能力の保有など安保3文書の改定は、わが国の安保政策の歴史的な転換を意味するものとして評価できる。ただ、台湾海峡での緊張の高まりや北朝鮮の相次ぐミサイル発射など、安保環境が厳しさを増す中で最低限の施策というべきだ。

自国守る覚悟持ち改憲を

いまウクライナで起きていることを見れば、改憲を急がねばならない。自分の国は自分で守るという覚悟なくして同盟国も助けてはくれない。軍事的な備えはもちろん、憲法など法体系から国民の覚悟までソフト面の備えを急がねばならない。

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