日本およびインド、ブラジル、ドイツ、アフリカの代表を国連安全保障理事会常任理事国に加える提案を英国のクレバリー外相が行ったことは、常任理事国入りを目指すわが国にとって歓迎されることだ。ロシアのウクライナ軍事侵攻になす術(すべ)もない安保理の状況は、国際平和を維持する国連の目的を形骸化しており、国連改革の国際世論を高めるべきだ。
英外相が日本を推挙
第2次世界大戦戦勝国の米国、英国、フランスとロシア(旧ソ連)、中国の5大国が常任理事国を務める国連安保理は、戦後ほどなくして東西冷戦時代を迎え機能不全に陥った。今なお拒否権を持つ常任理事国の対立は解消されず、ウクライナを侵略するロシアはその最も悪い例になっている。
一方、わが国では冷戦終結当時、東欧諸国、旧ソ連の民主化により、国連中心主義や国際協調路線に期待が高まった。平和の維持のため国際社会で名誉ある地位を占めたいとする憲法前文の一部分については、主要な国家目標とすべきである。
実際、わが国は国連通常予算の分担率も2018年までは2位を保ち、19年以降は米国、中国に次ぐ3位と大きな貢献をしている。加えて与野党の激しい憲法9条を巡る論戦を乗り越え、国連平和維持活動(PKO)に参加するため自衛隊海外派遣に道を開き、さらに対テロ戦争、イラク戦争では国連決議を大義名分に有志連合の多国籍軍を洋上給油などで後方支援する特別措置を取った。
今日、英外相が長期的外交方針を発表する基調演説で、他の主要国と共に日本を常任理事国に推挙する考えを表明したのは、民主主義の価値観を堅持し、予算分担と共に国際社会で安全保障においても役割を果たす実績、意思、能力を評価してのことであろう。
国連憲章7章には「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」が規定されており、軍事措置も取り得る強い権限を国連に与えている。しかし、国連軍は北朝鮮軍の南侵により開戦した朝鮮戦争以外に組織されたことはない。
“鉄のカーテン”と言われたソ連および東欧衛星国の共産主義国と米国および西欧の民主主義国が対峙(たいじ)した欧州正面の冷戦は、極東の朝鮮半島で南北対峙した北朝鮮と韓国との間で熱戦となる朝鮮戦争が勃発し、安保理にソ連が欠席したことから国連軍が実現した。
以降、国際紛争の調停や戦後復興など限定的ながら国連は少なからぬ業績を残しているが、新冷戦が叫ばれ、再び米英仏と中露が真っ二つに割れる対立の前に、国際社会の大半の指導者は強い問題意識を抱えていると言えるだろう。もはや第2次世界大戦当時の戦後秩序を展望した国連の形は、旧敵国条項を含め大きな見直しを図るべきだ。
秩序破壊への牽制を期待
現状では国連憲章の改正にも常任理事国を含む3分の2以上の加盟国の賛成と、同じく各国の批准を要するため、常任理事国拡大はじめ国連改革は極めて困難だ。だが、このような国際世論を高め、秩序破壊を牽制(けんせい)する効果を期待したい。