【社説】「救済法」成立 信教の自由に暗い影落とす

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る問題を受けた「被害者救済新法」が成立した。

行き過ぎた寄付勧誘の規制を目的とするものだが、憲法で保障された信教、内心の自由を侵しかねない法律が、拙速に成立したことは、わが国の自由と法治に暗い影を落とすものと言わざるを得ない。

憲法軽視の議論目立つ

同法は10日の参議院本会議で可決、成立したが、土曜日に国会審議が行われるのは異例だ。不当な寄付勧誘の規制を目的としているが、献金や喜捨は重要な宗教的行為であり、財産をどう使うかは個人の自由である。新法はこのような信教の自由や財産権など基本的人権に関わる微妙な問題を含んでおり、広く専門家の意見を聞きながら検討すべきである。

にもかかわらず、岸田文雄首相が今国会での成立を至上命題としたのは、相次ぐ閣僚辞任などによる支持率低迷を食い止めるためであったとみざるを得ない。「法律の実効性を高めるためにさまざまな努力をしていかなければならない」との首相発言は、十分な検討を経ない拙速ぶりを図らずも物語るものだ。

政策面でアピールする内容の乏しい野党にとって、与党自民党と深く関わりのある旧統一教会問題は存在感を示す格好のテーマである。与党以上に憲法を軽視する議論が目立った。定義の曖昧な「マインドコントロール」の内容を盛り込もうとしたのは、その見識の低さを表すもので、こうした用語が立法府でためらいもなく使われていること自体、憂慮せざるを得ない。

仮に条文に盛り込んだ場合、裁判所は「被害」を訴える個人がマインドコントロール下にあったか否かを判定しなければならず、内心の自由の侵害となる恐れが高い。政府がこれを盛り込まなかったのは当然である。

新法は法人・団体の寄付勧誘に際し、霊感で不安を煽り、寄付が必要不可欠と告げるなど、6類型の行為で「困惑」させることを禁止した。借金や住居の売却、生活維持に欠かせない事業用資産の処分による寄付要求も禁じている。不当な勧誘による寄付には最長10年間は取り消しを認める規定を設け、被害者の子や配偶者が将来受け取るべき生活費などの範囲で取り消し権や返還請求権を駆使できる。

さらに、個人の自由な意思を抑圧し、適切な判断が困難な状況に陥らせない、個人や家族の生活維持を困難にさせないなど、法人に3項目の配慮義務を課している。これらが守られず、個人の権利保護に著しい支障が生じている場合、順守すべき事項を勧告、従わない場合は法人名などを公表する。寄付行為は尊重されるべきだが、個人の窮乏や家庭の崩壊を招くものであってはならない。そういう面で一定の抑止効果は期待したい。

合憲性踏まえた見直しを

新法は施行後2年をめどに見直す規定も盛り込んだが、見直しは実効性と同時に信教、内心の自由の観点からもなされなければならない。拙速に成立した新法であるだけに今後、予測していなかったさまざまな問題が起きる可能性がある。その際、何より法の公平性と合憲性の観点から見直す姿勢が必要だ。

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