トップオピニオン社説【社説】ソウル雑踏事故 「群衆雪崩」防止の対策強化を

【社説】ソウル雑踏事故 「群衆雪崩」防止の対策強化を

30日、ソウルの繁華街・梨泰院で、心肺停止に陥ったとみられ搬送される人(AFP時事)

韓国・ソウルの繁華街、梨泰院の狭い路地で群衆が折り重なるように倒れる事故があり、150人以上が死亡、130人超が負傷した。日本人女性2人も犠牲となった。

梨泰院にはきょうのハロウィーンを前に多くの人が集まっていた。楽しいイベントの最中のあまりにも痛ましい事故である。韓国はもちろん、日本でも今回のような「群衆雪崩」を防ぐための対策を強化すべきだ。

転んだ人に折り重なる

在韓米軍基地の近くにある梨泰院は、外国人にも人気のカフェやクラブなどが多いことで知られる。日本でも大ヒットした韓国ドラマ「梨泰院クラス」では主人公がハロウィーンで今回の事故現場付近を歩く場面が登場し、特にこの時期には国内外から観光客が集まる。

事故のあった日は約10万人が梨泰院を訪れたとされ、各所でハロウィーンのイベントが行われていた。おびただしい数の人がひしめき合う中、現場となった幅の狭い坂道では、前の人が転び、後ろに続く人が次々と折り重なった。犠牲者の多くは救助された時点で既に心肺停止状態だったという。有名人が訪れたため、大勢が殺到したという未確認情報もある。

死傷者の多くは20~30代。亡くなった2人の日本人女性は10代と20代だった。中国、イラン、ノルウェー国籍などの外国人も20人以上が死亡した。

韓国の尹錫悦大統領は国民向け談話で「心が重く、悲しみをこらえ難い」と犠牲者の冥福を祈った。岸田文雄首相をはじめ各国首脳も相次いで哀悼の意を示した。ハロウィーンのようなイベントに大勢の人が集まるのは韓国だけではない。私たちも今回の事故を自分のこととして捉える必要がある。

韓国の李祥敏行政安全相は、事故について「(梨泰院に)例年と比べ特に懸念するほど多くの人が集まったわけではない」と説明。ただ、大規模なデモが行われていた政府庁舎がある光化門などに、警察の警備が分散された側面があると語った。

日本でも兵庫県明石市の歩道橋で2001年7月、花火大会の見物客が転倒し、群衆雪崩によって11人が死亡、247人が負傷する事故が発生した。この事故では、当時の県警明石署地域官や市部長、警備会社支社長ら5人が業務上過失致死傷罪で有罪となった。裁判では「機動隊などに要請して規制すれば事故を回避できた」と結論付けている。

今回の事故をめぐっては、前日にも人波に押されて転倒する事故の目撃情報がインターネット上に掲載されたという。また、前方で人が倒れた後も後方では前進を続けていたとも報じられている。警備や規制は十分だったのか。韓国政府や警察は早急に原因を究明し、再発防止策を講じるべきだ。

安全確保に万全を期せ

きょうのハロウィーンは、日本でも東京・渋谷などで混雑が予想される。

警視庁は写真撮影などのために道路で立ち止まらないよう呼び掛けを行い、転倒防止の対策を強化している。安全確保に万全を期し、ハロウィーンを迎えたい。

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