【社説】露の「戒厳令」 許せぬウクライナ領での弾圧

ウクライナを侵攻したロシア軍が支配する東・南部地域のルガンスク、ドネツク、ザポロジエ、ヘルソンの4州に対し、プーチン露大統領が「戒厳令」を発令したことは国際法違反を繰り返す不当な行為であり、恐怖支配による住民の被害拡大が懸念される。許されないことであり、ロシアは無謀な侵略行為から手を引くべきである。

圧政で犠牲者増加の危機

ロシアは一方的に4州で「住民投票」を強行して9月末にロシア領への「併合」を宣言したが、その後、今月に入ってもウクライナ軍は領土を奪還する反転攻勢を続けている。「併合」によりロシアは占拠しているウクライナ領への攻撃を「ロシアへの攻撃」と解釈し、大量殺戮(さつりく)兵器による報復を排除しない構えを示すが、このような脅しは本末転倒だ。

プーチン氏は安全保障会議で「併合は民意」と述べ、反撃するウクライナのゼレンスキー政権が交渉を拒んでいると批判したが、2014年のウクライナ南部クリミア半島「併合」以来、ウクライナが国際法違反の主権侵害を容認できないのは当然だ。加えて、激しい焦土戦を展開して多くの死傷者や避難民を出した上、残った住民に対してロシア兵が強制的に行った「住民投票」自体が不法であることは言うまでもない。

このような惨(むご)い状況の4州に戒厳令を発令したことは、ロシア統治の既成事実化をアピールするという以上に、4州に残る住民が抵抗運動を行い、反転攻勢を進めるウクライナ軍に協力することを防ごうとする焦燥感からという意味合いが強いと言えよう。ゼレンスキー大統領はロシアの戒厳令について「敗北に近づくほど、ヒステリーは大きくなる」と述べた。それだけに「戒厳令」を理由として激しい弾圧が行われる恐れが大きい。

すでにウクライナが奪還した地域では、無数の人々が殺害されて埋められた集団墓地や、激しい拷問を受けた遺体が発見されている。プーチン氏は演説で「知事」に大きな治安権限を付与することを表明したが、露軍支配下の4州では戦闘によらず逮捕・拘束などの圧政による犠牲者が増える人道上の危機に直面している。

一方、ウクライナ軍の攻勢は9月の東部ハルキウ州、北東部ハリコフ州の要衝イジュムの解放に続き、今月に入っても強まっている。南部のヘルソン州では親露派「州政府」は州内を流れるドニエプル川西岸の住民を退避させる決定をした。また、ロシア本土とクリミア半島を結ぶクリミア大橋が爆破され、ロシア軍にとって重要な補給活動に大きな打撃となっている。

苦戦に不満を強める露政権内では保守強硬派の圧力が高まり、侵攻作戦を統括する総司令官に陸軍出身のスロビキン氏が就任した。首都キーウをはじめ、一般住民を巻き込むミサイルや無人機による無差別攻撃が再発している。

防空態勢の強化を急げ

シリアのように都市を廃虚にするロシア軍の蛮行は非難されるべきものであり、ウクライナの防空態勢の強化を急ぐ必要がある。欧米諸国をはじめとした国際的な支援は不可欠だ。

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