【社説】通園バス 置き去り防止の対策徹底を

UnsplashSimona Sergiが撮影した写真

政府は幼稚園や保育所などの送迎バスに、置き去りを防止するため安全装置の設置を義務付けることを柱とする緊急対策をまとめた。

静岡県牧之原市の認定こども園では9月、バスに取り残された3歳の女児が死亡する事件が起きた。対策を徹底し、再発を防がなければならない。

女児が熱射病で死亡

国土交通省は年内に、安全装置の具体的な仕様を定めたガイドラインを策定する。①バスのエンジン停止後、一定時間で警告音が鳴り、車内後部のボタンを押して音を止める過程で目視確認を促す②取り残された子供をセンサーで感知する――などの方式を想定している。

対象は幼稚園などのほか、特別支援学校の幼稚部~高等部や障害児通所施設など推計約2万4000施設で、バス約4万4000台。義務付けは来年4月からで、義務違反の場合には業務停止などの処分とする。

9月の事件は、女児が約5時間にわたって車内に放置され、熱射病で死亡するという実に痛ましいものだった。事件当日の牧之原市内の最高気温は30・5度で、車内温度は最高で40度を超えていたとみられている。昨年7月には福岡県中間市でも同様の事件が発生した。決してあってはならない悲劇である。

政府は、安全装置の購入・設置に対する補助金を今月末にまとめる総合経済対策に盛り込む方針だ。岸田文雄首相は「事業者の負担が実質的にゼロになるよう財政措置を講じていく」と述べ、費用を全額補助する考えを示した。子供たちの命を守るため、事件の再発防止を徹底しなければならない。

一方、緊急対策では点呼などによる所在確認も義務付ける。通園バスの安全管理に関するマニュアルも策定し、バス乗降時の人数確認や欠席者の把握などを促すチェックシートをまとめたほか、外から車内が見えにくいスモークガラスなどの使用を避けるよう明記した。

子供の置き去りは、健康被害の出なかった事例を含めれば各地で頻発している。その多くは、運転手や職員による乗降時の確認不足が原因とされる。安全装置の設置は欠かせないが、電源を切ったり、警報に気付かなかったりするミスが生じる可能性もある。人によるチェックも重要である。

事件が起きた牧之原市の認定こども園では、バスからの降車や出欠の確認といった基本的なチェックが行われていなかった。事件当日は担当運転手が休んだため、理事長が急遽(きゅうきょ)バスを運転し、派遣職員の70代女性も同乗していたが、乗っていた園児6人の降車確認はお互い相手に任せていた。

また園の登園管理アプリ上では、女児が登園したことになっていた。しかしクラス担任らは確認しておらず、連絡なく休む園児もいたために欠席したと考えたという。

チェック体制の強化を

責任の所在が曖昧だったことが、痛ましい事件の原因になったと言える。

政府の緊急対策のほかにも有効な方法があれば取り入れ、チェック体制を強化して置き去りを防ぐ必要がある。

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