国内旅行の代金を一部補助する観光需要喚起策「全国旅行支援」がスタートした。
同時に始まった入国者数の上限撤廃によるインバウンド(訪日客)の拡大と合わせて、新型コロナウイルス禍で打撃を受けた観光業の復活への起爆剤としたい。
費用の40%を補助
全国旅行支援では費用の40%が補助される。公共交通機関と宿泊がセットの旅行商品は1泊1人当たり最大8000円、宿泊のみと日帰りの旅行商品は同5000円が補助される。さらに飲食店などで使えるクーポンを、平日は3000円分、休日は1000円分補助する。
46道府県が開始し、東京都を目的地とした旅行は20日から開始となる。映画やスポーツ観戦などのチケット価格を20%、上限2000円まで割り引く「イベント割」も始まる。期間について政府は12月下旬までとしているが、具体的日付は各都道府県の判断に委ねられる。
菅義偉内閣が2021年4月に始めた地域限定の「県民割」の拡大版である。岸田文雄首相は今年7月の開始を目指したが、感染「第7波」を受けて先送りしていた。遅きに失した感は否めない。
既に国内の旅行需要は、夏休み期間にコロナ禍以前の9割弱まで回復している。国民の方が先行した形だ。感染拡大への配慮から慎重な姿勢を取るのが、世論対策として妥当と考えたのかもしれないが、本末が転倒している。社会経済活動の復活と感染対策の両立の目的から、科学的根拠に基づいて判断すべき事柄だ。
遅きに失したとはいえ、これを国内観光の回復と持続的な発展の起爆剤とすべきだ。それとともにコロナ禍で海外旅行を含め旅行を我慢してきた国民の鬱憤(うっぷん)をリベンジ旅行で晴らすのも悪くない。
補助によって旅行の質をこれまでより少しレベルアップさせる人も少なくないと思われる。このような体験が、今後の旅行需要の高まりに繋(つな)がる可能性もある。
そのためには、割引額の上限が1人当たり1泊2万円の「Go To トラベル」の本格的再開を検討すべきである。20年に開始したものの「第3波」到来で同年末に停止したが、再開を期待する声が観光業界から出ている。
水際対策の緩和によって、1日当たりの入国者数上限が撤廃された。ワクチン3回の接種証明か海外出発前72時間以内に受けた検査での陰性証明を提示すれば、入国時検査が原則不要となる。
米韓両国や台湾など68カ国・地域の短期滞在ビザ(査証)の免除も再開。個人旅行も可能となる。
訪日客数のV字回復を
岸田首相はインバウンド消費について「年間5兆円超」を目指す考えを示しているが、実現可能な目標だ。
外国人の日本旅行人気は高いものがある。これを機にインバウンドのV字回復を図りたい。急速な円安に見舞われているが、そのメリットを最大限生かし、高付加価値の観光サービス提供に力を注ぐべきだ。